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(2)学校耐震化 08年5月中国・四川大地震発生 自治体財政難が足かせ
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 学校施設の耐震化を促すため、文部科学省は二〇〇八年度、危険な建物が多い市町村への「全国行脚」を始めた。昨年四月に続き、今月七日、再訪問を受けた尼崎市。白井文(しらい あや)市長は、文科省・学校耐震化推進プロジェクトチームの岩本健吾施設助成課長に、色をなして反論した。

 「努力していないみたいに言われると心外だ」

 「(財政難で)無い袖は振れぬ」と話した一回目と違い、「やれるだけのことはする」と説明した。それでもなお高いハードルを突き付ける岩本課長に、いら立ちが爆発した。

 子どもの命と直結する耐震化を、市は重点施策に位置付ける。しかし、「財政状況は性急な負担増に耐えられない」と、担当職員は苦渋の表情を浮かべる。

 「工都」として高度成長期、児童が急増した同市では、公立小中学校施設三百三十棟のうち、建築基準法が改正された一九八一年以前の建物が二百八十七棟と九割弱を占める。そのうち耐震補強が済んだ十九棟に、八一年以降建設の四十三棟を加え、同市の学校施設耐震化率は18・8%(〇八年四月現在)。全国平均62・3%、県平均63・8%を大きく下回る。県内市町で最低。全国に八百近くある市の中でも下から六番目だ。

    ◆

 「どの自治体も『財政難』と言う」と文科省担当者はこぼす。〇四年度に始まった三位一体改革で、国から自治体に配る地方交付税は二十四兆円から十九兆円に減った。バブル崩壊後の景気対策で重ねた公共事業の借金返済ものしかかる。

 一方、尼崎市はいち早く財政再建に乗り出している。「経営再建プログラム」に基づき、〇三-〇七年度、四千二百人いた市職員を三千三百人に削減。建設事業費も一九九八年度の四分の一に当たる百五十三億円に減らし、行革の効果額は五百億円以上を計上した。

 「市の財政状況は絞りきった雑巾(ぞうきん)のようなものだ」

 しかし、この行革効果も交付税削減などで吹き飛び、同市は二〇〇八-一二年度の新行革プランに着手した。さらなる職員数減などで、五十億円を生み出す計画だ。

    ◆

 その矢先の〇八年五月、中国・四川大地震が発生。多くの学校が倒壊したのを受け、文科省は同年六月、学校の耐震補強・改築で補助率をかさ上げした。借金して賄う市町村負担分も、返済時に地方交付税を手厚くする。文科省は「補強工事で自治体の実質的な負担は従来、事業費の三割だったが一割強まで減る」と胸を張る。

 尼崎市に残る未耐震の小中学校施設二百六十三棟。〇八年度の学校耐震化予算は四億六千万円だが、全施設の耐震化には「建て替えせずに補強だけでも、少なくとも二百億円以上はかかる」という。仮に一割負担でも市の持ち出しは二十億円。五年で五十億円の行革を目指す市には大きな追加負担だ。借金返済が始まるまで三年間は交付税増額もない。そして、昨秋からの不況。市は〇九年度の税収を「最低十億円は減る」と見積もる。

 「耐震化予算は増額したいが…」。新年度予算案を編成する同市の悩みは深い。(畑野士朗)

2009/1/13
 

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