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(4)ゲリラ豪雨 08年7月神戸・都賀川で5人死亡 気象情報の過信は禁物
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 「危険を認識しているかどうか。それによって行動は変わる。逃げるか逃げないか。一瞬の判断が命を救う」

 今月十三日、神戸大(神戸市灘区)であった土木学会「都賀川水難事故調査団」の会合。京大防災研究所の多々納裕一教授(災害リスクマネジメント)は強調した。

 昨年七月、突然の大雨で神戸市灘区の都賀川は急激に増水し、親水施設にいた五人が流され死亡した。その日は朝から青空が広がり、気温は三〇度超の真夏日。不気味な黒雲が現れたせつな、突然激しい雨が降りだした。

 多々納教授らは昨秋、親水施設の利用者に聞き取り調査した。「どのタイミングで逃げるか」の問いに三人に一人が「雨が降ってきた」を挙げ、「空が暗くなってきた」も五人に一人いた。「事故後だけに意識は高い」と同教授。都賀川は当時、わずか十分間で約一・三メートルも水位が上昇した。迷っている余裕はない。

 二〇〇八年、短時間で局地的に大雨が降る「ゲリラ豪雨」の被害が、全国で相次いだ。これを受け、官民挙げて気象観測の精度向上、情報発信の迅速化に取り組む。ただし、気象情報の「過信」には危険も潜む。

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 都賀川の水害から約一カ月後、兵庫県は、親水施設のある河川に、大雨や洪水の注意報、警報が出たことを知らせる回転灯を設置することを決めた。近く都賀川で着工し、順次広げていく。

 しかし「その情報だけに頼らないで」と、神戸海洋気象台の草川和康・防災気象官は訴える。ゲリラ豪雨は、狭い範囲で急速に発達する積乱雲でもたらされることが多く、予測が難しいためだ。

 ゲリラ豪雨と同様に、積乱雲が原因の現象に竜巻がある。気象庁は昨年三月、「竜巻注意情報」の発表を始めた。積乱雲の動きなどをとらえ、突風の発生を予測するが、昨年末までに発生した六十二件のうち、事前に捕捉できたのは十四件のみ。逆に有効時間内に予測が当たらない「空振り」発表は百五十三件に上った。

 突然現れる積乱雲をとらえるのはそれほど難しい。そのため、親水施設のある河川に回転灯が完成しても、過信は禁物だ。草川防災気象官は重ねて強調する。「回転灯が作動しないから大丈夫とは思わないでほしい。逆に、回転していなくても、空を見て危ないと感じたら逃げてほしい」

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 体感情報を重視し、高い確度を実現した気象予測がある。76・7%。昨年十月、民間気象情報会社ウェザーニュース(東京)が発表したゲリラ豪雨の捕捉率(東京都内)は、かなり高率だった。

 同社が携帯電話を使った「ゲリラ雷雨メール」サービスを始めたのは、都賀川水害の二日後。全国約一万一千人の協力者から、空の様子を報告してもらい、気象データと照らし合わせ、豪雨の発生を予測した。協力者が十キロ四方内に百五十人以上いれば、捕捉率は90%を超えたという。

 「湿った風が吹いてきた」「急に雲が発達している」など、寄せられた情報はすべて、協力者自らが肌で感じた内容だ。同社広報担当の上山亮佑さん(28)は「大事なのは自ら異変を察知すること。情報を待つだけでは備えにならない」と話す。

 最新技術に基づく防災情報と、危険を知る体感情報。ともに精度が上がれば、身を守ることのできる確率は高まる。(岸本達也)

2009/1/15
 

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