見渡すと、震災復興の再開発ビルが林立していた。神戸市灘区JR六甲道駅南。全部で14棟あり、店舗や事務所、住宅が同居する。そして地域再生を願う住民の思いを積み重ねるように、空に向かって伸びる。
阪神・淡路大震災から18年。再開発が進む一方で、住民の高齢化が進む。喫茶店を営む高橋敦子さん(58)がこぼした。「ここ数年、人も店も入れ替わりが激しいのよ」
10年前、入居するビルの完成とほぼ同じころに知人の勧めで開業した。「もうお店をやめようか」と思うこともあるが、常連客の「いつもありがとね」の一言が踏みとどまらせる。
「みんな誰かと話をしたい、ふれあいたいと思ってるのよ」。どんなに外観がきれいな町でも、人の思いは同じだ。
人ありて町。「街」の字は似合わない。
(宮路博志)
2013/1/11