昔ながらの「町のお風呂屋さん」を車の往来が激しい国道沿いで見つけた。柳原の「えべっさん」で親しまれる神戸市兵庫区の柳原蛭子(えびす)神社東にある「東(あずま)湯」だ。
主人の平岡健さん(78)は震災当時、地元の自治会長を務めていた。辛うじて倒壊を免れた建物を応急処置し、奇跡的に湧き続けた井戸水で湯を張った。
震災3日後、玄関先にのれんを上げた。最初の2日間は無料、1カ月間は割引料金で営業した。
「だまって帰る人は、一人もおらんかった。みんなに『助かったわ』『ありがとう』と感謝されてね。風呂屋冥利(みょうり)に尽きたよ」
あれから18年。業界は斜陽で廃業が後を絶たないが、「ここまできたら死ぬまで店をやりますわ」。老主人の決意は揺るがない。
(宮路博志)
2013/1/15