神戸・三宮の東、生田川の交差点は交通の要衝だ。阪神高速3号神戸線、山麓バイパスなどが交錯する。
ふと視線を送った先に公衆電話ボックスがあった。携帯電話の普及で、最近は見かけることが少なくなったが、18年前は存在を際立たせていた。
寒空に行列ができた。近くで食堂を営む藤本文隆さん(74)玲子さん(70)夫婦も列に加わった。「ほんまに大勢が並んでな。確か途中で電話が通じんようになって、あきらめたわ」と文隆さん。
2、3日後、壊れたと思っていた食堂の黒電話が突然、鳴った。九州の知人からだった。初めて無事を伝えることができた。2人は「よし、一本つながった。これで何とかなる。そう思ってほっとした」と話す。
受話器をにぎりしめ、懸命に伝える。悲しいこと、つらいこと、そして「大丈夫だよ」。
電話ボックスに映った、1995年冬の光景。
(宮路博志)
2013/1/12