神戸市長田区の本庄町交差点からJR鷹取駅に向かう途中、ひし形をした大国(だいこく)公園がある。震災では、東から西へと一帯をなめるように広がる猛火を、十数本のクスノキとイチョウが食い止めた。今も枝ぶりは健在だ。
昼下がり、公園脇の一画でアクセサリー作りが始まる。工芸雑貨の輸入業、谷川敏さん(64)の自宅兼倉庫前。子どもたちに、天然石を使って工作を楽しんでもらう。もちろん無料だ。
震災で谷川さんは猛火や家屋の倒壊を免れ、家族も無事だった。一方で町並みはすっかり変わってしまった。「周りの人に掛ける言葉がなかったよ」。あのときの後ろめたさを、今も忘れられない。
駆け回る子どもたちは次の町の担い手だ。きょうも谷川さんは、あどけない笑顔と好奇心いっぱいの“地域の宝”にほほ笑む。「こっちに遊びにおいで。この指とまれ」(宮路博志)
=おわり=
2013/1/16