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教訓を疑え

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判決で借り上げ復興住宅からの退去を命じられた女性。歩行が困難で「慣れてきた部屋だからこそ暮らせる」=神戸市兵庫区(撮影・大山伸一郎)
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判決で借り上げ復興住宅からの退去を命じられた女性。歩行が困難で「慣れてきた部屋だからこそ暮らせる」=神戸市兵庫区(撮影・大山伸一郎)

判決で借り上げ復興住宅からの退去を命じられた女性。歩行が困難で「慣れてきた部屋だからこそ暮らせる」=神戸市兵庫区(撮影・大山伸一郎)

判決で借り上げ復興住宅からの退去を命じられた女性。歩行が困難で「慣れてきた部屋だからこそ暮らせる」=神戸市兵庫区(撮影・大山伸一郎)

 「迷惑はかけたくないが、ここでしか生きられへん」。神戸市兵庫区の借り上げ復興住宅に暮らす女性(79)が声を振り絞る。

 阪神・淡路大震災の被災者向けに兵庫県と県内5市が都市再生機構(UR)や民間から約7千戸超を20年契約で借り上げた。期限切れを迎え、神戸市は退去を求めて女性ら9世帯を提訴。昨秋、初の判決で女性は部屋の明け渡しを命じられ、控訴した。2018年度は期限切れの団地数が最多となり、転居を迫られる恐れもある。

 発生6年を過ぎてなお1万5千人超がプレハブ仮設に暮らす東日本大震災に対し、阪神・淡路では約5年で解消。そのスピードと住環境改善に借り上げ住宅は寄与した。しかし、そこでの暮らしは「期限切れ」という問題をはらんでいた。

 今、仮設住宅でも同様の問題が懸念されている。

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 東日本の後、民間賃貸住宅の空き部屋を行政が借りて提供する「みなし仮設」(借上(かりあげ)型)が急増。東日本では全仮設のうち半数超を、16年熊本地震では8割近くを占めた。

 仮設建設の遅れから、国は被災者名義で入居した物件も容認。家賃補助に等しく、阪神・淡路で譲らなかった「現物給付の原則」を実質的に崩す形となった。「仮設住宅の考え方が完全に変わった」。兵庫県の担当者は話す。

 人と防災未来センター(神戸市)の小林郁雄・上級研究員(73)は「南海トラフ巨大地震への備えでもみなし仮設(借上型)が必須になる」と指摘。被災者が立地を選べ、自治体にとっても素早い供給やコスト低減、空き家の活用など利点が多いからだ。

 内閣府の有識者検討会は16年末、大規模災害が予想される42都道府県に借上型の準備状況を尋ねた。半数超の自治体が必要戸数を推計、4分の1が事務マニュアルを定める中、「災害の規模や地域により必要となる仮設の種類は違う」とする兵庫県は手付かず同然だった。

 「淡路島などでは賃貸住宅の数も限られる」と担当者。プレハブを大量投入した阪神・淡路のノウハウは通じず、マニュアル策定は難航している。

 借上型では居住地が分散し、阪神・淡路以上に被災者が孤立する恐れがある。最大の問題は、原則2年という入居期間だ。被災者が望まない転居を迫られる可能性があり、東日本では既に顕在化。借り上げ住宅と共通する問題だ。

 借り上げ住宅訴訟に関わる津久井(つくい)進弁護士(48)は「被災者の公平性にとらわれ一律に対応する」施策の在り方を問題視。「2年を過ぎたら家賃を補助し、希望者に残ってもらえばいい。そうした新たな仕組みを、災害行政のトップランナーである兵庫県が提案すべきだ」と訴える。

 行政には「仮(かり)」でも、被災者には安住の地となる。そんな被災地の現実に即した支援が求められている。(黒田勝俊、前川茂之、小林伸哉)

2018/1/12

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