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新長田駅南再開発地区で建設工事の進む兵庫県と神戸市の合同庁舎(中央下)=神戸市長田区二葉町5(撮影・後藤亮平)
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新長田駅南再開発地区で建設工事の進む兵庫県と神戸市の合同庁舎(中央下)=神戸市長田区二葉町5(撮影・後藤亮平)

新長田駅南再開発地区で建設工事の進む兵庫県と神戸市の合同庁舎(中央下)=神戸市長田区二葉町5(撮影・後藤亮平)

新長田駅南再開発地区で建設工事の進む兵庫県と神戸市の合同庁舎(中央下)=神戸市長田区二葉町5(撮影・後藤亮平)

 神戸市長田区の新長田駅南再開発地区の一角、防音壁に囲われ、鉄骨の組み立てが着々と進む。2019年6月、兵庫県と神戸市の税務部門を集約、約90億円をかけた9階建て合同庁舎が完成する。

 縦横に広がる商店街網の裏路地に棟割り長屋や文化住宅が軒を並べた一帯は、阪神・淡路大震災で壊滅的な被害を受け、中高層ビルが整然と立ち並ぶ街に生まれ変わった。人口は震災前の1・4倍に増えたが、商業地のにぎわいは乏しい。

 庁舎は約千人の県市職員や来庁者の経済効果を見込んだ活性化策で、市は「計画発表後、飲食などの新規出店が相次いでいる」と効果を強調。近くの飲食店主らが「活気が出るのはいいこと」と歓迎する一方、大正筋商店街振興組合前理事長の伊東正和さん(69)は「行政は本質に向き合っていない」と冷ややかだ。

 新長田再開発地区では市が整備した広大な商業床の多くが売れ残り、商業低迷は「復興に便乗した、行政主導の過大開発の失敗」とも語られてきた。だが、伊東さんは「問題はこの街の硬直性だ」と言う。

 再開発ビルの完成に際し、市は床の賃借を許さず、商店主の多くはローンで床を購入せざるを得なかった。時代や客層の変化にもかかわらず店舗構成は固定したまま。店主らは年齢を重ね、閉店した店主も多い。資産価値の下がった床は売ろうにも売れなかった。

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 「需要に合わせ店がどんどん変わっていける街でないと生き残れない」

 11年の東日本大震災後、東北から相次いで訪れた視察団に、伊東さんは「教訓」を語り続けた。

 13年秋、宮城県女川町の商店主らが新長田を訪れた。その2年後、商業復興の先陣を切って、女川駅前に全店テナントの商店街「シーパルピア女川」がオープン。当面の観光需要を意識して店舗を並べた。

 需要に応じた店舗の代謝が期待できる全テナント式。商店主には被災前はなかった家賃や管理費などの固定経費が重荷となる。女川では5年間は家賃が減免されるが、その先は未定。採算を不安視して出店を諦めた地元店主もいる。誘客の戦略もあって、シーパルピア女川は、27区画の半数がUターンを含む町外からの出店となった。

 運営会社「女川みらい創造」の近江弘一専務(59)は「今後は復興とともに増える町民の生活需要にも対応したい」と語る。

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 一方、新長田では商業者に再起の場と安全な街を用意することが最優先。目的は果たされた。商業地としての戦略性と商店主のこだわりをいかに両立するか。二つの震災の教訓を踏まえた課題が浮かび上がる。

 低迷が続く限り“反面教師”でしかない新長田。伊東さんは「庁舎に90億円を費やすなら、抜本策を」と訴える。求めるのは、市が再開発ビルの床を商店主から買い戻すこと。テナント方式で街の一新を図る「再・再開発」だ。

 「商業地に問われるのは『ここにしかないもの』。長田らしい長屋情緒のある街につくり直すべきだ」(森本尚樹)

2018/1/15
 

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