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 阪神淡路大震災よろず相談室(神戸市)は災害で障害を負った人らを支援するNPO法人だ。理事長の牧秀一さん(67)は昨年10月、東海大熊本キャンパス(熊本市)を訪ねた。一昨年4月の熊本地震、熊本県南阿蘇村で倒壊したアパートの下敷きになり、右脚を切断した東海大2年の梅崎世成(せな)さん(21)=福岡県大牟田市=に会うためだ。

 熊本には支援団体がなく、梅崎さんは「心のよりどころができた」と喜ぶ。支援を約束した牧さんは「同じような状況は災害のたびに繰り返される」と嘆く。

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 震災障害者が支援の網から外れている問題は阪神・淡路大震災で浮き彫りになった。重傷者数や被災者アンケートから同法人は「阪神・淡路では2千人超はいる」と推測する。

 当時飲食店を経営していた岡田一男さん(77)=神戸市中央区=は同市東灘区で、崩れたビルのがれきに埋まった。救出されたのは約18時間後。歩行に障害が残った。しかし、知人に教えられるまで身体障害者手帳を申請することさえ知らなかった。「行政から支援情報を得られず、悩みを抱え込んだ」

 兵庫県と神戸市が震災障害者の実態調査に乗り出したのは震災の15年後のことだ。349人の存在を確認し、県は相談窓口を設けた。岡田さんは思った。「僕らは見捨てられとったんや」

 同法人は昨年2月、「支援には把握する仕組みが必要」と、手帳の申請書類に記す障害の原因欄に「自然災害」を加えるよう厚生労働省に求めた。同省は3月末、都道府県などに追加するよう通知を出した。

 牧さんの活動に加わった岡田さんは「一歩前進」と評価する。ただ、東京都などが通知を反映しておらず、将来起こりうる首都直下地震の対応に不安が残る。

 同法人は併せて、災害障害見舞金(最大250万円)の支給要件緩和も要望。対象は両脚切断や両目失明など最重度の障害で、現状では梅崎さんや岡田さんは受けられない。牧さんは「家や仕事を失い、後遺症の苦しみが続く震災障害者への支援が手薄」と訴える。

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 さらに実態把握が難しいのが、震災が原因で知的・精神障害を負った被災者だ。手帳申請で一律に把握する仕組みがない。

 神戸市灘区の自宅で被災した城戸洋子さん(37)=同市北区=は当時中学3年だった。ピアノが頭部に直撃し言葉が出にくくなるなど高次脳機能障害に。家族の指摘で専門医を見つけ、病名を知るまでに6年を要した。知的、精神、身体障害の手帳を持つが、申請はその都度、支援者がサポートした。

 母美智子さん(65)は「気付いてほしい、助けてほしいの一心だった」と振り返る。同法人は近く、震災を起因とする知的・精神障害について手帳の申請書類で把握できるよう国に要望する予定だ。「もう震災障害者の存在を『知らない』では済まされない。阪神・淡路の教訓を生かして」と美智子さん。

 支援からもれている被災者がいないか。阪神・淡路での苦い経験を糧に、不断の検証が求められている。

(小林伸哉)

2018/1/16
 

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