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 阪神・淡路大震災で被災者の生活を支援しようと、国や自治体が貸し付けた災害援護資金。返済をめぐる混乱はいまだ収まらない。

 神戸市役所に程近いビルの一室にある同市の援護資金の担当部署。書棚には、災害援護資金で、同市が資力判定のために返済を保留した借り主らの資料が並ぶ。同市への未返済は1956件計31億円。大半は返済の見通しが立っていない。

 同市は昨夏、保証人に対する債権放棄を決めた。しかし、国は「約9割の人が完済している」と公平性の観点から難色を示し、債権自体の免除につながるかの判断が持ち越されている。

 「子どもに(借金を)残してしまうのか…」。同市長田区の女性(72)は、返済を一時保留するとの通知を見つめた。全壊した飲食店の再建に上限350万円を借りた。残債は100万円以上。長女の保証人としての債権は放棄されたが、相続の可能性は消えない。

 東日本大震災の被災地では昨年12月から災害援護資金の返済が本格化した。阪神・淡路を教訓に借り入れ要件を緩和し「保証人なし」などの特例が設けられたが、熊本地震をはじめ他の災害での適用はない。災害により異なる対応は制度自体の不備を表している。

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 阪神・淡路の被災者は自宅や店の再建などのため、援護資金をはじめ借金に頼るか、資産を切り崩すほかなかった。公的支援を求める声が広がり、1998年に被災者生活再建支援法が成立。それでも上限は300万円(2004年改正)にすぎない。

 兵庫県は年5千円の掛け金で最大600万円を支給する県住宅再建共済制度(フェニックス共済)を設けた。初適用は09年の県西・北部豪雨。給付金を基に自宅などを再建した佐用町の湯淺康晴さん(60)は「再建する決意を後押しした」と話す。

 しかし、共済を支える加入率はわずか9・5%。全国制度化を目指し、兵庫県が各都道府県に必要性を尋ねたところ、「必要」と答えたのは災害リスクの高い自治体ばかりだった。和歌山県の担当者はメリットを認めつつ、支給額が膨れ上がる事態を懸念する。広域災害では被災自治体が共倒れの恐れもあるからだ。

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 給付財源は支援法も同様だ。東日本で国の支援法の財源負担が50%から80%に引き上げられたことを「制度破綻」と指摘する専門家もいる。神戸大の豊田利久特命教授(77)=災害経済学=は「想定外の大災害で国が支払う保証はない。財源を再検討すべき」と訴える。

 豊田教授は、日本と同じく地震の多いニュージーランドの地震保険に注目する。火災保険に強制付帯となっており、国の給付金など公的支援がないこともあって加入率は9割を超える。

 日本では地震保険の加入世帯率は30・5%(兵庫26・7%、日本損害保険協会調べ)。豊田教授は「公的支援に保険や共済、貯蓄を組み合わせて備える必要がある」とする。明日起こるかもしれない巨大地震。原点である「支え合い」の仕組みをゆるぎないものとしなければならない。(若林幹夫)

2018/1/13
 

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