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阪神・淡路大震災の語り部、児島正さん(中央)らのサポートを受け、児童らが地域の防災マップを手掛けた。近くの早大生も参加する=東京都新宿区、戸塚第二小学校 瀬尾征男さん(左)と児島正さん=東京都千代田区、東京海上日動火災保険
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阪神・淡路大震災の語り部、児島正さん(中央)らのサポートを受け、児童らが地域の防災マップを手掛けた。近くの早大生も参加する=東京都新宿区、戸塚第二小学校

瀬尾征男さん(左)と児島正さん=東京都千代田区、東京海上日動火災保険

  • 阪神・淡路大震災の語り部、児島正さん(中央)らのサポートを受け、児童らが地域の防災マップを手掛けた。近くの早大生も参加する=東京都新宿区、戸塚第二小学校
  • 瀬尾征男さん(左)と児島正さん=東京都千代田区、東京海上日動火災保険

阪神・淡路大震災の語り部、児島正さん(中央)らのサポートを受け、児童らが地域の防災マップを手掛けた。近くの早大生も参加する=東京都新宿区、戸塚第二小学校 瀬尾征男さん(左)と児島正さん=東京都千代田区、東京海上日動火災保険

阪神・淡路大震災の語り部、児島正さん(中央)らのサポートを受け、児童らが地域の防災マップを手掛けた。近くの早大生も参加する=東京都新宿区、戸塚第二小学校

瀬尾征男さん(左)と児島正さん=東京都千代田区、東京海上日動火災保険

  • 阪神・淡路大震災の語り部、児島正さん(中央)らのサポートを受け、児童らが地域の防災マップを手掛けた。近くの早大生も参加する=東京都新宿区、戸塚第二小学校
  • 瀬尾征男さん(左)と児島正さん=東京都千代田区、東京海上日動火災保険

 「駅前のこうしゅう電話は災害がおきてもつながるから安心」「あき地のとなりのブロックべいは、自分たちより高いので頭に落ちてきたらきけん」

 児童の字で書かれ、写真が添えられている。赤は危険な場所、青は安全、緑は避難所-。小学校周辺の地図が、複数の色で塗り分けられている。一目で伝わる防災マップだ。

 「家の人に地域の防災の工夫や危険を伝えて、地震の時に身を守ってもらいましょう」。先生の呼び掛けに、3年生の子どもたちが目を輝かせた。

 昨年11月、東京都新宿区の戸塚第二小学校。阪神・淡路大震災当時、東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)の取締役神戸支店長を務め、経験を語り継ぐ瀬尾征男(ゆきお)(80)=東京都中野区=と、活動を共にする児島正(71)=横浜市=は「よく気が付いたね」と優しく声を掛けた。

 児島もまた、安田火災海上保険(現損保ジャパン日本興亜)の兵庫本部総務課長として「1・17」を神戸で経験した。その後、転勤先の東京本社の近くに同校があった縁で「地域の防災の役に立てば」と、授業を手助けしている。マップ作りでは、震災の経験をもとに児童とまちを歩いてアドバイスした。

 一連の取り組みには、近くにある早稲田大のサークル「早大防災教育支援会」の学生が参加する。大学の先輩に当たる瀬尾の授業にも出た3年の藤原吏沙(りさ)(21)は「経験者の話は生々しくてリアル。思いを感じた。『命を守る』という言葉が残った」。地元町会の本多誠(82)は「授業を受けた児童は、家族や下級生に伝えていく。将来の地域のリーダー。まちを知り、好きになってほしい」と目を細める。

    □   □

 瀬尾は、ひょうご震災記念21世紀研究機構と、前身の阪神・淡路大震災記念協会が、震災の事実を伝えるため関係者にインタビューした「オーラルヒストリー」に聞き手、語り手の両方で参加した。

 ヒストリーは当初、30年非公開とされたが、東日本大震災などで「次の大災害が起こる前に公開し、教訓を生かそう」と方針が変わり、瀬尾の分を含む本人や関係者の了承が得られた一部が公開された。ただこれらは、十分活用されているとは言い難い。

 瀬尾らと共にまとめた国立研究開発法人・防災科学技術研究所(茨城県つくば市)理事長の林春男(68)は「復旧復興に努めた生の声を残すのは、同時代の責任と考えた」と意義を強調する。「震災の経験者は忘れないが、経験していない人が増えている。(ヒストリーという)種にそれぞれの関心で目を向けてもらえれば」

 児島は「防災の学問は発達したかもしれないが、各地の災害対応を見ても使いこなす人間力のあるリーダーがいない」と不安を募らせる。自らが暮らす首都圏では東日本大震災による帰宅難民問題が露呈し、直下型地震の発生も予測されており、「阪神・淡路の経験を広く共有する意義は大きい」と力を込める。

 「支店全体で自分のやるべきことをしたお話におどろいた」「家族や仲間との時間を大切にしたい」-。

 瀬尾の口承は、阪神・淡路を教科書でしか知らない児童の心に届いているようだ。ただ「被災者の考え方は一人一人異なる。そして過去の経験を伝えても、そのまま役には立たない。新たな災害はそれぞれにとって初めての経験だから」とわきまえる。

 がんと闘いながら教壇に立ち続ける瀬尾。「私も自分のためになると考え、生きるために話している。人の役に立っているとは思わないが、これからも聞かれるなら話そうかと思う」=敬称略=

(佐伯竜一)

=おわり=

    □   □

 オーラルヒストリーは、人と防災未来センター(神戸市中央区脇浜海岸通1)の西館の5階資料室で閲覧できる。原則月曜と年末年始を除く午前9時半~午後5時半。入室無料。貸し出し不可、有料でコピー可。資料室TEL078・262・5058

2020/1/9
 

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