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昭和の駅長姿でキハを見送る浦浜晃彦さん=長駅
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昭和の駅長姿でキハを見送る浦浜晃彦さん=長駅
野沢敬次さんの作品「鉄路逍遙」=2017年3月11日、長駅で撮影
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野沢敬次さんの作品「鉄路逍遙」=2017年3月11日、長駅で撮影

 「北条鉄道にキハが来たら人気がでるやろな」

 北条鉄道長(おさ)駅のボランティア駅長、浦浜晃彦さん(63)=兵庫県姫路市=は、幼なじみの鉄道写真家、故野沢敬次さん=大阪府池田市=と何度も話していた。池田市に住んでいた小中学生の頃、長期休暇には香寺町の親戚宅に野沢さんと泊まり、近くのJR播但線溝口駅でSL列車の写真を撮っていた。

 「懐かしい播但線の風景が残っている北条鉄道に、『国鉄顔』のキハが似合うと思ったんでしょうか」。浦浜さんは、61歳で亡くなった親友を思い浮かべた。

 中学2年で香寺に引っ越すと、野沢さんとは徐々に疎遠になった。交流サイト(SNS)で名前を見つけ、2012年1月、40年ぶりに再会。野沢さんは鉄道写真家になっていた。

 カレンダーや絵本などに列車や鉄道の画像を提供。全国のローカル線を巡り、北海道の雪原を駆けるディーゼル列車や黒煙を上げるSL列車などを撮影していた。「子どもの頃の播但線が原風景としてあったのでは」。浦浜さんは思う。

 野沢さんと再会後、浦浜さんもまた、鉄道写真を撮り始めた。14年、野沢さんから「子どもの頃の播但線に似ている」と北条鉄道を紹介された。2年後、築100年以上の木造駅舎がある長駅のボランティア駅長に選ばれた。野沢さんは「国鉄時代の服装で立つだけでも絵になる」と応援してくれた。

 SLを撮っていた1970年前後、溝口駅には10人ほどの駅員がいた。窓口で入場券を買おうとすると、顔なじみになった駅員たちは「フィルム代にしたらええ」と、無料で改札を通らせてくれた。活気があった頃の駅を再現しようと、長駅では、帽子や懐中時計など小物も用意して、昭和の駅長姿で乗降客を迎えている。

 長駅には、写真仲間が集まるようになった。撮影をしたり、作品を見せ合ったり、野沢さんの仲間のプロたちも姿を見せた。ハロウィーンやクリスマスに運行するイベント列車の乗客とも交流。サンタやお化けに仮装して乗客を楽しませた。

    ◇

 2020年10月、野沢さんは撮影先へ移動中に体調を崩し、帰宅後亡くなった。その数カ月前、「北条鉄道にキハが来るかもしれない」。うわさを聞いて2人で「楽しみやな」と喜んだ。

 長駅に集う写真仲間が北条鉄道で撮りためた作品は写真集になり、キハ40形の導入費用を賄うためのクラウドファンディングで返礼品として、寄付者に贈られた。表紙の作品「鉄路逍遙」は、列車を見送る駅長姿の浦浜さんを野沢さんが撮影した。オレンジ色の夕日が、浦浜さんと列車を温かく包んでいる。(敏蔭潤子)

【バックナンバー】
<3>東北出身の運転士 憧れた故郷の列車と再会
<2>車両を呼んだ男 希少価値に利点見いだす
<1>再出発、想像以上の人気 乗客増、愛好家が人垣

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