神戸・ポートアイランドの医療産業都市がバイオ関連の研究、開発で活気づいている。神戸大は一帯を数百社規模の集積地「バイオクラスター」とする構想を掲げ、中核施設となる「バイオものづくり共創拠点」の建設も進む。そんな中、神戸大と産業技術総合研究所、カネカがつくる共同研究グループが先月、海で分解されるバイオプラスチックの大量生産に世界で初めて成功した。バイオ産業の現在地と、その展望は-。研究グループの高相昊(コウサンホ)・神戸大大学院特命助教(31)に話を聞いた。(鈴木雅之)

海で分解されるプラ、開発成功/神戸をバイオ産業の拠点に

 -バイオものづくり。なかなか聞き慣れない言葉です。

 「バイオという言葉は、基本的には『生物由来』という意味に置き換えて考えてもらったら、理解しやすいと思います。『バイオものづくり』というのは一言で言うと、生き物が持っている機能を生かして製品を作り出すことです。バイオと聞くと、とても高度で新しい技術を想像するかもしれませんが、実は私たちの生活で既になじみのあるもの、例えば日本酒も『バイオものづくり』の産物です。こうじ菌や酵母菌が生きる力を利用して、米からエタノール、つまりお酒を造っています。そんな生き物の力を利用したものづくりで注目されている中に、バイオプラスチックがあります」

 -脱炭素社会の実現に不可欠といわれていますね。

 「私たちの身の回りにあふれているプラスチック製品は、石油などの化石燃料から作ってきました。プラスチックは人々の生活を豊かにしてくれましたが、その一方で、当時はそれが自然の中でどう分解されるのかという視点がなく、つまり循環型社会というものが全く描けていませんでした。その結果、分解されないままのプラスチックが、微小なプラスチックの粒子『マイクロプラスチック』となって、年間数百万トンも海洋に流れ出ています。2050年には魚の重量を超えるとの試算もあり、既に人体や生態に対して影響を与え始めています」