■リスク取る政策に賛同/フロンティアの誇り「今が好機」

 今年7月、円相場は1ドル=161円台と、約38年ぶりの水準に下落した。過度な円安は輸入物価の上昇を通じて家計に影響を与える。この時、電撃的な為替介入で円安基調を転換させた、と市場関係者が評価するのが、財務省の国際部門トップ「財務官」を務めた神田真人さん(59)だ。沈着冷静に「(市場の)過度な変動には適切な行動を取る」と語る姿が繰り返しテレビに流れ、「令和のミスター円」とも呼ばれた。9月には神戸市の顧問に就任。アジア開発銀行(ADB、本部・マニラ)の総裁候補として選挙に備える中、グローバルとローカルの二刀流で活躍する神田さんに思いを聞いた。(高見雄樹)

 -約3年間の在任中、大規模な円買い介入で外国為替市場と対峙(たいじ)されました。介入総額は約24兆円と、円買いでは史上最大とか。

 「実は、為替って(財務官の)仕事の数%なんですよ。時間でいうと5%もない。確かにこの20年間、主計局や金融庁にいたときも毎朝、世界中の経済指標や市場の動向をチェックしていましたが、為替のためというより世の中を知るためでした」

 「介入にはそもそも、1ドルがいくらになったら発動するといった水準なんて関係ありません。投機によって起こる、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)からかけ離れた過度な変動を是正するのが目的です。一方的な投機で円安が進んだ今回も同じですよ。介入によって(投機筋が)これ以上円安に賭けてもうけられなくなり、諦めて撤退せざるを得なくしたことで円安の流れが反転した、と市場は評価しています」

東京都千代田区、財務省

 -では、財務官として印象に残る仕事は?