「ごちゃまぜ」のコミュニティーこそ/災害関連死をやっつける

 昨年1月、激震と大火災に見舞われた能登半島の北端、輪島朝市のほど近くに、施設「輪島KABULET(カブーレ)」はある。天然温泉に食事処(どころ)、フィットネスを備え、高齢者、障害者福祉施設が近接する「ごちゃまぜ」の場所だ。建物の解体が続く中心市街地の中で、今も地震前と変わらず老若男女が集う。2018年の開業から親しまれてきた地域住民の交流場は、災害後にその真価を発揮したという。少子高齢化が急激に進む中での被災。施設長の寺田誠さん(52)にこれまでと、これからについて聞いた。(長嶺麻子)

 -輪島カブーレはどんな経緯で生まれたのですか。

 「2014年に『地方消滅』という本が出たんです。東京一極集中で人口が急減すると指摘した、いわゆる『増田レポート』。輪島市の場合、当時2万9千人いた住民が、40年になると半減しますっていう人口推移が示された。この人口減少にどう立ち向かうか。国が始動したうちの一つが、年齢や障害の有無を問わず全世代、全員が活躍できる『生涯活躍のまち』のプロジェクトでした。それに輪島市が手を挙げたんです。当時の坂口茂副市長(現市長)が、社会福祉法人で面白そうな動きをしていた佛子園(ぶっしえん)(石川県白山市)と、青年海外協力隊の経験者が集まる青年海外協力協会(JOCA)に声をかけ、3者連携のベンチャーとしてスタートしました」

 「翌15年にJOCAから、私を含め10人の職員が出向し、地域の課題や関係者の分析を始めました。青年海外協力隊員が出発前に訓練する技法で、いろんな国で失敗も重ねながら学んできたやり方です。見えてきたのが、市内に2千軒ある空き家問題でした。核家族化が進み、中心市街地が空洞化して町が立ちゆかなくなる。ドーナツ化現象です」

 「そこで中心市街地を元気にするため、5軒の空き家と2カ所の空き地をリノベーションして拠点施設を建てました。それが輪島カブーレです。すぐそばに障害者、高齢者施設を造り、人を集めるための温泉を掘って。さらに健康増進や育児支援施設も造って、とにかく人が交わり、関わる機会を増やしたんです。従業員には障害者も高齢者もいます。文字通り『ごちゃまぜ』の場所です」