■孤立する妊婦、後を絶たず/社会は命を大切にしているのか
新しい命を宿した。でも、産み育てるすべが分からない。頼れる人がいない、身を寄せる場所もない。そんな女性たちを24時間365日、迎え入れる「扉」が神戸市北区にある。「小さないのちのドア」。2018年に開設された民間施設で、来所だけでなく電話や交流サイト(SNS)を通して、1万6206人の相談に応じてきた(昨年8月末時点)。なぜこれほど多くの妊婦が孤立し、不安定な状況に置かれているのか。運営法人の代表理事として、女性とおなかの命と向き合う永原郁子さん(67)は「社会は本当に命を大切にしているのでしょうか」と根本的な問いを投げかける。(那谷享平)
-活動について教えてください。
「LINE(ライン)や電話、来所など、1日に30~70件の相談が寄せられます。このうち『妊娠したかもしれない』という不安が全体の57%、妊娠陽性での相談が12%、中絶に関するものが4%ほどです。皆、普通の若者たちで、10代も珍しくありません。『誰にも相談できない』『彼と連絡が取れません』などと、孤立して深刻になりやすいケースが多く、来所する電車賃がないとか、冬も夏服を着ているとか、ネットカフェを転々としてお金がなくなってホームレス状態とか、生きていくのにギリギリの女性もいます」