長崎で被爆した聴覚障害者の姿を見つめた写真展「ピカドンのドンが聞こえなかった人々」が尼崎市総合文化センター(同市昭和通2)で開かれている。京都市の写真家豆塚猛さん(70)が約40年前から現地に通い、10年かけて記録。戦後80年の節目に初めて本格的な展示が実現した。豆塚さんは「被爆と身体的ハンディ。両方を背負って生き抜いた彼らの存在をいま一度伝えたい」と語る。10日まで。(小林良多)

■長崎に通い10年かけ記録

 豆塚さんは、手話通訳や医療系専門誌の撮影を本業とする傍ら、1983年から長崎に通い、「被爆ろうあ者」と呼ばれる36人を丹念に追った。

 きっかけは、手話通訳グループによる被爆体験の聞き取り活動だった。依頼を受けて同行すると、予想に反して誰もが明るく、表情に引き込まれた。爆心地の光景を説明する聴覚障害者の語りは熱を帯びた。

 10代で被爆した後、預けられた親戚宅で奴隷のように働かされた人や、支援が届かず被爆者認定さえ受けていない人も。不遇が次々と明らかになった。

2人とも聴覚障害があり、幼少期に長崎で被爆した夫婦(豆塚猛さん撮影)

高齢になってから視覚まで失った妻。夫婦は手のひらに字を書いて会話した(豆塚猛さん撮影)