柿渋が塗り重ねられた焦げ茶色の板をそっと踏みしめる。120年以上の歴史を持つ「花道」。滑らかな木の表面にわずかに刻まれた凹凸が、繰り広げられてきた古典芸能の余韻を宿している。
芝居小屋「出石永楽館」(豊岡市)が一躍注目を集めている。きっかけは、映画「国宝」のロケ地に選ばれたことだ。

李相日監督による話題作は、興行収入で邦画実写の歴代1位を記録。館内では、俳優の吉沢亮さん、横浜流星さんが花道や舞台で「二人藤娘」を演じるシーンが撮影され、その美しいたたずまいがスクリーンを彩った。

今年11月23日の一般見学には来館者が1500人超と過去最多を更新。広島市から見学に来た会社員女性(29)は「花道や舞台裏を見て感動した。ここでいつか生の歌舞伎を見てみたい」と声を弾ませた。