■「よりどころ」求め「物語」に依存/一歩引いて見る機能低下
アイドルやアニメだけでなく、政治家を「推す」動きが広がっている。交流サイト(SNS)で支持者が結びつき、人柄やふるまいへの「愛」を語り合う、いわゆる「推し活選挙」だ。ただ、兵庫県知事選や先の衆院選では支援者同士が衝突する場面もあり、社会を分断する危険性が懸念される。宗教学者の柳澤田実さん(52)は、戦後の豊かさの中で「何も絶対視しない」という考え方が広がり、宗教や家族、地域に代わってSNSに居場所を求める人が増えたとみる。だからこそ「これからの選挙は、より推し活的になっていく」と話す。(前川茂之)
-宗教や信仰を巡る心の動きを「推し活」という切り口から研究しておられます。人々の熱は、どこから生まれてきたのでしょう。
「人間には、自分が神聖だとみなすものに『献身』する心理的メカニズムが備わっています。その対象は時代によって変化しています。キリスト教はもともと、見知らぬ他者への愛など抽象度の高い事柄を神聖だとみなしてきました。しかし、1960年代以降の消費社会とリベラル化の中で、宗教全体がより即物的になったと思います。同時に『何かを絶対視しない』という価値観が広がり、地縁や血縁の重要性が減少したことで、自分が無償で献身できる『よりどころ』となる親密圏は当たり前のものではなくなりました。そして『献身したい』心理を持て余すようになった人々は、次第に消費に『よりどころ』を求めるようになり、神聖なものは消費対象となりました。推し活も基本的にはこの延長線上にあると思います」