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大型船によるクルーズ市場が世界的に活況だ。神戸港へも連日のように優美な姿を見せ、港町らしさを演出している。中でも、盤石の人気を誇るのがクルーズ船「飛鳥」のシリーズだ。その「磁力」に着目し、地域創生の舞台に生かす仕掛け人がいる。船舶投資ファンド「アンカー・シップ・パートナーズ」(東京)社長の篠田哲郎さん(57)。「海(船)から陸(地域)を元気にする」と熱く語る。一体どうやって? と尋ねると、穏やかそうな篠田さんの口から、スケールの大きな事業とビジョンが次々と飛び出した。(広岡磨璃)
「船舶投資ファンド」とは、どのようなビジネスですか。

「投資家から募った資金などで船舶を調達し、海運会社に使ってもらうというものです。これまでに累計80隻以上の大型船舶を保有してきました。2019年からは、日本郵船グループで『飛鳥』を運航する郵船クルーズの株式の半分を所有し、運営に参画しています」
「創業のきっかけは、新卒で入社した日本興業銀行(現みずほ銀行)です。歴史的に海運業界とのつながりが深い興銀で、担当部署に配属され、業界のダイナミズムに圧倒されました。家族経営の小さな船主会社が、数隻の船で100億円を超える資産を持ち、数人で大きな商売をしている。何より、海運は島国の日本に不可欠な社会インフラです。自分も船を持つ側になってみたい、と考えました。銀行としてお金を貸す側にいるけど、手続きを分かっているから借りるのも得意なはず、と。4年がかりで準備し、会社を立ち上げました」

創業して間もなく、今の事業にとって原点と言える出来事があったのですね。
「創業は2007年。すぐにリーマン・ショックが来て市況が一気に冷え込みました。そのとき、広島銀行さんから『地元にある小さな島の造船会社を助けてやってほしい』と相談が寄せられたんです。『その会社がつぶれると、島の経済が立ちゆかなくなる』と。迷いましたが、他の事業をすべてストップして銀行とともに支援に当たりました。(本業に期待する)投資家の皆さんからは非難されましたが、造船会社は無事、経営危機を乗り越えた。当時、自分たちの経営が傷んででも、地元の企業を救った広島銀行さんの姿勢には畏怖の念すら覚えました」