■支援の隙間に落ち、本人も気づけず/学びあいながら連帯を
複数の差別を受けて生きるということ。例えば、障害者であると同時に女性であるということがそれに当たる。重なり合う抑圧の「交点」で生きる経験は、障害のない女性とも障害のある男性とも違う、独自の困難を伴う。出産・子育てを巡る無理解、異性による介助の受忍、障害者運動での男性優位…。「DPI女性障害者ネットワーク」(東京)は、そんな「複合差別」の解消を目指す当事者たちの全国組織だ。「私たちの問題が解決すれば、誰もが生きやすい世界にもっと近づく」。自身も視覚に障害のある藤原久美子代表(62)=神戸市中央区=にゆっくり話を聞いた。(那谷享平)
-まず複合差別とは何か、について聞かせてください。
「障害、ジェンダー、民族、性的指向などで社会的に弱い立場に置かれやすい属性を、同時に複数持つ人が経験する差別です。単純に1+1=2になるのではなく、新たな困難が生じるんですね。例えば、女性支援に障害者の視点がなく、障害者支援にジェンダーの視点がないと、障害のある女性は支援制度の隙間に落ちてしまう。より問題が見えづらく、解決が難しい。そして本人も気づけず『仕方ない』と考える。私自身もそうやったんですけど」
-ご自身はどういう体験を?
「私は糖尿病のため30代で視覚に障害が生じ、その後、結婚しました。娘を妊娠した時、医者や親に人工妊娠中絶をするよう説得されたんです。『障害児が生まれるリスクが高い』『障害のある体で育てられないだろう』と。私に苦労させたくないという気持ちからなので、私もそれが差別だなんて思っていなかった。後になって『それこそが複合差別だよ』と教わる機会があり、初めて気づきました。夫には障害がありませんが、逆に障害のない妻と障害のある夫という組み合わせだったら、ここまで出産に反対されない。背景にあるのは、子育てを女性の仕事とするジェンダー規範。そして『障害者は何もできない』という偏見です」
「私は娘を産んで育ててきましたが、今も出産や子育てを家族や行政、病院から否定される当事者がいる。女性の障害者にとって自己決定って本当に難しい。支援制度も障害者が子育てをする前提でつくられていないんです」
-ほかにはどんな困難が?