■30年の保険適用目指す/クローン技術の進歩が後押し

 動物の臓器を人に移植する-。そんなSFのような世界が現実になりつつある。米国では昨年、ブタ腎臓が移植された腎不全患者が271日間生存し、その後、あらためて臓器提供者(ドナー)から腎臓が移植された。日本でも2028年の臨床試験(治験)に向けて準備が進む。長年、移植用の遺伝子改変ブタを研究してきた明治大学発ベンチャー「ポル・メド・テック」代表取締役の長嶋比呂志さん(71)は「目標とする30年に国から条件付き承認が得られれば、多くの患者に移植することができる」と話す。(山本哲志)

 -なぜ動物からの臓器移植が必要なのでしょう。

 「圧倒的なドナー不足です。腎臓移植の待機リストに登録されている人は約1万5千人で、このうち実際に移植を受けられる人はわずかです。腎臓は他の臓器よりも移植の平均待機年数が長く、約15年と言われています。国内には35万人近い人工透析患者がいますが、合併症やがん、高齢の患者など待機リストに登録できない人も多く、行列にも並べず移植をあきらめています」

 -ドナー動物にブタが選ばれている理由は何でしょうか。

 「1960年代から(動物の臓器や細胞を人に移植する)『異種移植』は海外で冒険的に行われていました。有名な事例では、重い心臓疾患のある赤ちゃんにヒヒの心臓を移植したものがあり、数週間生きて『ベビー・フェイ』と呼ばれました。ただ、どうしても拒絶反応は起こります。加えて動物愛護の観点や倫理的な問題から、高等類人猿からの移植は許されなくなりました。ペット動物も除外されますから、残るのは家畜です。ウシやウマは大きすぎますし、狂牛病などが怖い。その点、ブタは人の臓器と大きさが近く、雑食性で生理的な機能も似ている。ブタの腎臓は外科の先生が『人の腎臓と2個並べられたら分からない』と言っておられたほどです。ほかにも繁殖性に優れ、90年代からクローン技術が飛躍的に進んだことなど、いろんな要素があります」