■自然界では大事な資源/土に返せば命の循環に

 「こうして林の中にしゃがみ込んでいる私のまわりには、さまざまな生きものたちのいとなみが満ちあふれている」(ヤマケイ文庫「くう・ねる・のぐそ」より)。半世紀にわたって野ぐそを続け、うんこを土に返す「糞土師(ふんどし)」として執筆や講演活動に取り組んできた伊沢正名さん(76)=茨城県桜川市=は、世界中の誰よりもうんこと向き合ってきたレジェンドだ。「ほかの生き物の命をいただいている私たち人間が、自然に返せるものはうんこしかない」と語る伊沢さん。「糞土思想」が目指す自然との共生について尋ねた。(長谷部崇)

-野ぐそを始めたきっかけは。

 「1973年の暮れ、地元でし尿処理場建設に反対する住民運動がありました。当時はまだ下水道が発達しておらず、バキュームカーが行ったり来たりすると『臭くて汚い』っていうことなんですね。処理場があるから安心してトイレにうんこができるのに、それに反対するって何なんだと憤りを覚えました。同時に自分のうんこも処理場に持って行かれて誰かに嫌な思いをさせていたのだと考えると、素直にトイレでできなくなったんです」

 「で、なんで野ぐその方に行ったかというと、その年の秋に菌類の働きを知ったんです。山でタマゴタケっていう大きくて真っ赤なキノコに出合い、ガイドブックや図鑑を繰ってみたら、巻末の解説にキノコなどの菌類は動植物の死骸やうんこなど死んだ有機物を分解して土に返し、その養分で植物が育って森ができると書いてあった。命って循環するんだ、死んでおしまいじゃないんだと衝撃を受けました」

-二つの出来事が重なったと?