将来有望なパラアスリートが神戸で働いている。新エネルギー事業会社「新日本住設」(神戸市)の正社員で車いす陸上のホープ、岸沢宏樹(23)=大阪市。陸上部員だった学生時代、練習中の事故で生死をさまよった。生還後、パラ陸上に転じ、100メートルからマラソンまで幅広く挑戦。競技2年目から国内大会入賞を続けている。(有島弘記)
「目が覚めず、寝たままならサヨナラ」。手術前、医師に最悪の事態を告知された。
110メートル障害の選手だった大体大3年の2017年12月、普段なら難なく持ち上げられたはずの150キロのバーベルの下敷きになった。診断は「脊髄損傷」。生死にかかわる重傷で、手術は長時間に及んだという。
手術は成功し、意識が戻った。安堵(あんど)するとともに「世界を目指す」と直感が働いた。
大学では全国の舞台に立てず、卒業後の競技人生を描けずにいたが「死にかけた命。ぼんやりだった目標が逆に見えた」。パラ陸上で名を上げることを決めた。
翌春に競技を始めると、大体大OBで新日本住設とプロ契約を結ぶ山本篤(38)の紹介で、同社に新卒入社。経理・総務課で働き、練習のため午後3時までに切り上げる。「仕事時間は人の半分。差をつけられないようにスピーディーさと丁寧さを徹底している」。真面目な働きぶりと、明るい性格は評判が良く、同僚女性も「人としてすてき」と太鼓判を押す。
競技面でも早々と頭角を現し、19年7月のジャパンパラ陸上大会は男子100メートル6位、4カ月後の大分国際車いすマラソンはハーフ部門7位入賞を飾った。種目を絞らないのは最高速の基準と持久力を高めるためだ。
「アスリートとして結果を求められる立場。パラ全体のメディア露出が少ないので、自分がどんどん出て行きたい」
来夏の東京パラリンピックは標準記録を突破できておらず、目標を22年の世界選手権に定める。第二の地元「神戸」で開かれるひのき舞台だ。









