
明治初期、神戸・居留地の外国人が結成したスポーツクラブ「神戸レガッタ・アンド・アスレチック・クラブ」(KR&AC)。テニスやラグビー、野球、サッカーなど神戸のスポーツ史の先駆けになった組織が9月、設立150年を迎える。関西で最も古いスポーツクラブの歴史を振り返った。(西竹唯太朗)
同クラブは1870(明治3)年に創立。貿易業などで神戸の居留地に駐在する外国人が母国のスポーツを楽しむ組織として、薬剤師で実業家のスコットランド人、アレキサンダー・キャメロン・シム氏が創設した。
名前の通り、当初は英国で人気のあったレガッタと陸上競技が中心だった。
現在の神戸税関(神戸市中央区新港町)付近にボートハウスを持ち、関西初のレガッタ(ボートレース)を開催したとされる。
メンバーには貿易商や各国の領事、大手企業の支店長らが名を連ねた。
「社交の場でもあり、会費を経費として出す企業や組織もあった」と神戸外国人居留地研究会理事の高木応光さん(74)は振り返る。
高木さんによると、地元の日本人との交流は当初から盛んだった。1880年には、居留地内で働く男性が日本人で初めてクラブの運動会に参加し、陸上競技に出場している。
96年には、神戸一中(現神戸高校)とクラブの外国人メンバーが初めて野球で対戦。予想に反し、同中が20-9で勝利した。以降、神戸で野球人気が高まり、同クラブとの試合は学校行事になったという。
最盛期の昭和初期には、欧米人を中心に約800人が所属した。1962年には、三宮地区の再開発に伴い、もとの東遊園地内から現在の磯上公園に移転した。
その頃から徐々に日本人の競技参加者も増えたが、「当時は20人以上の会員推薦に加え、高額な入会金が必要で、ハードルが高かった」と高木さん。
2000年代に入ってからは、事業所を東京や大阪などに集約する企業が増え、欧米人の会員は減った。
現在の会員数は約80人。日本人会員の数が、外国人を少し上回るという。会員外国人の国籍もかつての欧米中心からインドや中国などアジア人が大部分を占めるようになった。
取り組む競技数も15種類以上だったのが、現在はラグビーやボート競技がなくなり6種類に。一方で、会員が中心になって英会話サークルを開いたり、クラブハウス内のレストランのメニューを拡充して一般開放したりと、敷居の高いイメージを覆し、地域に密着したスポーツクラブを目指している。
東勉支配人は「150年も続いた歴史的なスポーツクラブ。歴史を閉ざさないためにも、運営を続けていきたい」と話している。
■記念誌発行、クラブハウス改修へ支援募集
「神戸レガッタ・アンド・アスレチック・クラブ」は創設150年の節目に合わせて記念誌を発行し、老朽化が進むクラブハウスの改修に取り組みます。この記念事業に際し、神戸新聞グループのクラウドファンディングサイト「エールファンド」を活用し、広く支援を募っています。
記念誌は園田学園女子大名誉教授の田辺眞人さんが監修し、12月に神戸新聞総合出版センターから発行予定。完成から60年近くが経過したクラブハウスは傷みが目立つため、外壁の塗り替えやトイレ改修などを実施します。
「記念誌+クラブハウスレストランでの特製カレー食事券」(5千円)などの購入が支援になります。同クラブの三木谷研一理事長を通じて縁の深い、サッカーJ1ヴィッセル神戸関連の商品もあります。詳しくはエールファンド(https://kobe.en‐jine.com/)で。
