ミドル
入社からはや6年、30代が目前に迫る。同世代の友人たちはバタバタと結婚し、家を買ったやつもいて、正直、焦りがなくもない。将来のことなど考えず、無駄にお金を使ってきたが、そろそろここらで生き方改革。とにかく貯金を殖やしたい。手つかずで残しておいたボーナスを握りしめ、初めての投資…って、一体どうしよう?(望家太郎=もうけ・たろう)
■株式投資って?
投資といえば株でしょ。そんな思い込みで訪ねたのは、唯一神戸に本店のある独立系の光証券。あのー、50万円を増やしたいんですけど。
「株式ですか、投信(投資信託)ですか。運用期間はどれぐらいをお考えで」
本店営業部の大越智正大係長(30)の畳みかけるような問いにアワアワとなると、目の前に資産運用のパンフレットが広げられ、投資入門が始まった。
「むちゃな投資をしないように、ニーズをちゃんと把握しますね」。口座の申込書を受け取り、投資方針や資金の性格といった回答欄に記入していくが、運用期間の欄に来て、ぱったりペンが止まった。
「短期は1年未満、長期は3年以上、中期は1~3年と考えてもらえば」。早いに越したことはない。短期に丸を付けかけたところで、やんわり忠告を受ける。
「新規であれば、短期はお勧めしません。中長期だと、一時的に損しても、トータルで利益を上げられる可能性が高くなりますから。長い目で見る方がいいですよ」
ほかに注意点は。
「損失が出た場合にどこまで許容できるか、自分で範囲を設定することも大切かと。購入する銘柄を判断する際の一つの指針になる」
■安定か成長性か
次はどの株を選ぶかだ。
国内株式の売買は基本的に1口100株から。仮に株価が千円だと、10万円が必要となる。軍資金50万円で大丈夫か…。
「東証1部の安定した大企業より、成長性は、マザーズやジャスダックに上場しているベンチャー企業の方が期待できます」と大越智係長は解説する。
で、狙い目は。
「ゲームは好きですか? 身近な商品の企業から始めるのもお薦めです。でも」
でも、何?
本田健志営業部長(52)が引き取る。
「米国株の購入も検討しては。日本より経済成長率が高く、アマゾンやアップルなど世界的企業への投資も魅力的ですよ」
うう、欲の虫が騒ぐ。
「ただし、今すぐ必要でない『余裕資金』の範囲内で、が鉄則です」
■堅実に投資信託
初めての投資だけに、失敗はしたくない。「口座の開設には約1週間。ゆっくり考えてみてください」。送り出された翌日、神戸市内で資産運用セミナーに参加すると、投資信託の四文字に心をつかまれた。
セミナー後、投資信託相談プラザ神戸支店の植草浩一支店長(35)に駆け寄った。
-50万円を増やすにはどうしたら。
「絶対にもうかる株なんて、勉強しても分かりません」。ですよね。「30歳手前で独身ですか。まず、つみたてNISAに回しましょう」
株より堅実で、分かりやすそうだ。
「投資信託は、税金や手数料といったコストをいかに下げるか。つみたてNISAは長期の資産形成に有効です」
■分散か一択か
でも、国内型や海外型、株式型や債券型に、インデックス型やアクティブ型と…、ああ、もう分からない!
植草支店長がおもむろにノートパソコンを開いて、断言する。「お薦めは、インデックス型の『eMAXIS Slim米国株式(S&P500)』ですね」
初心者は株式や債券を組み合わせたバランス型、という思い込みを揺さぶる一言だ。
「資産銘柄の上位は、マイクロソフトやアップル、アマゾンなど米国大手企業で、安心感があります」
信じていいですか?
「市場を分散させた外国株式型の多くも実は、投資対象の6割以上は米国市場株。そう考えると、手数料などの低いインデックス型の米国株式、この一択でいい」。
でも、めいっぱい20年間預けたら、その頃はアラフィフ。もう少しいい夢を…。
「どうしても短期がいいですか。FXや仮想通貨は投機。自己責任の世界ですよ」
ある仮想通貨交換業者のサイトには、こうあった。
「価格が急落したり、突然無価値になってしまうなど、損をする可能性があります」
なけなしの50万円がいきなり無価値に。ハードボイルドすぎる無情な表現に、急に欲の虫が鳴きやんだ。
¥ ¥ ¥
■小遣いの範囲でできる…かも?
金融庁の「NISA特設ウェブサイト」には、資産運用シミュレーションのページがあり、投資初心者には便利だ。
例えば、毎月の積立金額が1万円で、想定利回りが年率3%の低リスク商品を選び、積立期間を10年とすると、達成額は約140万円。運用益は約20万円だ。
この条件で500万円を達成するには、27年かかる。15年で500万円を達成するなら、月2万2千円の積立額が必要になる。
後は小遣いや家計と相談だ。
¥ ¥ ¥
投資…主に、株式▽投資信託▽債券-に分かれる。株式投資は、株式市場に上場された企業の株を購入することで配当金や株主優待を得られるほか、企業業績により、株価の値上がり益が期待できるのが特徴。
東証…東京証券取引所の略。第1部、第2部の本則市場、ジャスダック、マザーズの新興市場がある。資産規模など上場基準が異なり、株価の安定性が高い本則市場に比べ、新興市場は大幅な上昇が期待される。
米国株…世界最大のニューヨーク証券取引所、新興企業が集まるナスダックなど米国市場の上場銘柄。株主への還元意識が強いとされ、評価額の大きいベンチャー企業などの新規公開株も注目を集める。
投資信託…多くの投資家から集めた小口資金を運用の専門家がまとめて投資し、利益を還元する金融商品。株、債券、不動産などを組み合わせる分散投資により、長期的に安定した投資成果が期待される。
つみたてNISA…2018年に始まった少額投資非課税制度(NISA)の長期積立枠。年間40万円を最長20年間、非課税で運用でき、投資総額は最大800万円。購入時手数料は無料。20歳から利用でき、100円からの投資も可能。現行制度は2037年まで。
インデックス型…東証株価指数(TOPIX)など国内外の特定の指数に連動した投資信託。値動きが比較的緩やかで安定性が高く、初心者向きとされる。
アクティブ型…資産運用のプロが選んだ投資対象を選択し、運用する投資信託。積極的な売買などで指数を上回る利益を追求するが、投資リスクは高くなり、手数料も掛かる。
FX(外国為替証拠金取引)…一定の金額を担保として預けることで何倍もの外貨が取引できる。為替レートの動きにより、少ない資金で大きな利益が得られる一方、損失リスクも高くなる。
仮想通貨(暗号資産)…インターネット上で取引される電子的な資産で、「ビットコイン」など多種類が流通する。交換所を通じて売買ができ、投機マネーが流入。不正アクセスによる外部流出も起きている。マネーロンダリング(資金洗浄)への悪用防止に向け、各国で規制強化の動きが出ている。
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