愛するペットとの別れから、ペットロスに陥る人は少なくありません。東京都に住む女性、Nさんも長年ペットロスに苦しめられた一人です。20年以上前、一緒に暮らしていたウサギのチャッピーちゃんのことがずっと忘れられません。なぜこれほどまでに、今も悲しいのだろう…。
突き詰めて考えると、Nさんは自分のことしか考えていないと気付きました。別れの「悲しみ」より大きいのは、取り残される「恐怖」だったのです。そこにチャッピーちゃんの存在はありません。自分の気持ちをチャッピーちゃんに押し付けていただけです。
これが分かってからというもの、Nさんは変わりたいと考えるようになりました。今がその時だと感じたのです。実は、高校卒業後からずっと勤務した会社を体調不良で退社したばかり。これから第2の人生が始まるのです。まずは、今まで避けていたペットとの暮らしに挑戦してみようと考えました。夫が猫好きなので、猫の里親サイトをくまなく見て回ります。
その中で1匹の猫が目に留まりました。推定年齢1歳の不思議な模様の三毛猫、ナナちゃんです。直感的にこの子しかいないと、Nさんは感じました。でも夫は素っ気ない。「キミが良いんなら、良いんじゃない?」ですって。夫はいつもこんな感じ。
Nさんは溜息をつきながら、東銀座で開催されている譲渡会へ一人で向かいました。そこにはたくさんの猫がいるものの、Nさんの目にはナナちゃんしか映りません。
「今度は自分の気持ちを押し付けるんじゃなく、この子の立場になって考えたい」
そんな思いでナナちゃんを見つめます。そんなNさんに保護主さんは色々なことを話してくれました。ナナちゃんの野良猫時代の様子や、ナナちゃんの名前の由来。あと、実は保護主さんとNさんの家がとても近いことも。Nさんは運命を感じました。
話はとんとん拍子に進み、2022年3月22日からトライアル開始です。保護主さんが家までナナちゃんを連れてきてくれたのですが、夫は仕事で不在。保護主さんから「ご主人にも会いたい」とお願いされて、ようやく仕事を切り上げて帰ってきました。ナナちゃんも、ケージの中で固まったままご飯も食べません。Nさんは先行きが不安です。
ナナちゃんのハンストは2日目に突入。Nさんはナナちゃんがお腹を空かせていることが心配で、ちゅーるの封を切りました。すると、ナナちゃんはケージから飛び出してきて、Nさんのお膝にちょこんと乗ったではありませんか。そのまま、ちゅーるをガツガツと食べます。Nさんはホッとしました。
このちゅーるが取っ掛かりになったのか、ナナちゃんはウエットフードのご飯を食べるように。数日後にはカリカリご飯も口にするようになりました。空腹が満たされるとようやく落ち着いたようで、ナナちゃんはリラックスモードでくつろぎます。まるで、ずっとお家にいたかのよう。
でも元野良猫ですから、なかなか触らせてくれません。それなのに、出勤前の夫には「なでて」とすり寄っていくのです。夫はとても嬉しそう。Nさんは夫の満面の笑みを久しぶりに見ました。そうそう、こういう笑顔の人だった。
4月16日、本譲渡のために保護主さんが再びNさんの家を訪問します。この日も夫は仕事です。譲渡契約だけだったのでNさんだけで構わないと言われていましたが、なんと夫は保護主さんにぜひお礼を伝えたいと時間を作って帰ってきました。
「こんな警戒心の強い子を保護してくださって、本当に感謝しかありません」
いつも仕事を理由に家のことを避けていたのに…とNさんは少し思いましたが、よくよく考えると要所要所で夫はNさんの力になってくれていたことを思い出しました。会社を辞めることが出来たのも、夫の支えがあるからこそ。
ナナちゃんを通じ今までと違う視点を持てるようになったNさんは、肩の力を抜いて過ごせるようになりました。夫婦の会話も増え、笑顔も増えます。ナナちゃんの存在が、夫婦を向き合わせるきっかけになったのです。
いつかはまた、チャッピーちゃんのようにナナちゃんとも別れなければならない日が訪れるでしょう。その時まで精一杯、ナナちゃんと向き合っていきたい。夫と一緒にお世話をしていきたい。今はそう考えているそうです。
Nさんの第2の人生に幸あれ。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)
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