人手不足を背景に、高齢者を戦力として歓迎するパート・アルバイト先が増えています。高齢でも働く方々の「最高年齢」とその働き方について、現場の声を聞きました。
■高齢者介護施設の食堂 パートさんの最高年齢79歳
Aさん(関東在住、40代、パート)は、数年前から高齢者介護施設の給食サービスで、調理・配膳補助員として週に3日~4日のパート勤務をしています。
通常食から流動食まで、アレルギー対応や好みに合わせて用意するため、資格を持つ調理師や栄養士の指示を受けながら、野菜を切ったり盛り付けたり、調理器具を洗ったりといった補助業務を担当するパートのメンバーが、常に十数人必要な規模なのだそうです。
人手は常に足りない状態で、交通の便が悪くパート求人の応募も少ないことから、経験や年齢に関係なく採用しており、定年もないそうです。
そんな職場でAさんとよくペアを組むのが、79歳のパートスタッフです。パート歴も長く、仕事にも慣れているそうですが、最近の悩みは「パートに来るためには車が必要だけれど、いつまで免許の更新ができるか」なのだそうです。
「その人はお元気ですが、入居者さんの中には79歳よりも年下の方も普通にいらっしゃいます。そこまで働ける元気があってすごいなとも思いますし、そこまで働かなければならないのかとも思います。『ずっと頑張ってくださいね』と言った方がいいのか、『のんびり過ごしてくださいね』と言った方がいいのか、相槌に悩みます」
■年齢不問のアルバイト募集に応募 最高齢は80歳
Bさん(関西在住、40代、事務)の勤める会社では、年に一度の繁忙期に3カ月間ほどの事務補助アルバイトを募集しています。ここ数年、そのアルバイトへの応募者数が減り、さらに応募者の年齢が上がってきていて、人手不足を感じているそうです。
それでも、平日9時~15時で週3回程度という人気のある時間帯、かつ服装自由という条件だったため、必要な人数はなんとか確保できていましたが、今年は「採用するか悩む」人を対象にしなければ人数が足りない状況になってしまいました。
特に悩んだのが、70歳を超える応募者たちで、なんと応募者の最高年齢は80歳だったそうです。
「力仕事なし、簡単な事務補助業務と案内に書いたためか、『これなら私もできる』と思って、仕事にブランクがある方からの応募が多かったです。さすがにその年齢でPC操作を教えるのは大変なのではと、これまでは不合格にしていたのですが、今年は人手が足りず、結果的に69歳の新人さんをお迎えしました」
「年齢不問」の仕事に応募した最高年齢は、みなさんの職場でも上がってきていませんか?
■どこまで伸びる? 75歳以上の就業率
内閣府がまとめた「高齢社会白書」によると、65歳以上の就業者数および就業率は上昇を続けています。
特に65歳以上の就業者数は、21年連続で前年を上回っており、就業率は2014年と2024年を比較して、65~69歳で13.5ポイント、70~74歳で11.1ポイント、75歳以上で3.9ポイント、それぞれ伸びています。
2024年の75歳以上の就業率は12.2%と、1割を超える数字となりました。健康で働くことに前向きな高齢者が増えているのか、物価高などの影響で「働かざるを得ない」状況にある高齢者が増えているのか……。働く高齢者のニーズに応じて、どのような働き方やサポートが必要なのか、それぞれの職場での検討が求められそうです。
【参考】
▽内閣府-2025(令和7)年版高齢社会白書 第2節 高齢期の暮らしの動向
◆沼田 絵美(ぬまた・えみ)人材業界や大学キャリアセンター相談業務などに20年以上携わる国家資格キャリアコンサルタント。