猫は人間の言葉をある程度理解しますが、細かいところまでは分かりません。特に「あと1個」や「3日だけ」という数字が入ると、混乱するよう。愛知県に住むキジトラの男の子、たけちくんも数字に混乱してしまった猫です。
今まで一緒に暮らしていたお兄ちゃんが「2年だけ」と家から出ていった時、これが永遠の別れだと思ってしまったのです。とても寂しく思ったようで、今まで以上にお母さんにベッタリ。年に数回、お兄ちゃんは帰省していましたが、その時は「お母さんの知り合いが遊びにきている」と思っていたみたい。
一方、お兄ちゃんは再びたけちくんと一緒に暮らせる日を楽しみにします。お母さんから送られてくる写真や動画を心の支えに、仕事を頑張りました。時々、こっそり猫カフェで他の猫を撫でることもありましたが、やっぱりたけちくんとは全然違います。毛並みもくりくりお目目も、たけちくんは唯一無二の存在。
ようやく別居期間が終了し、お兄ちゃんとたけちくんが一緒に暮らせる日が訪れました。たけちくんも喜んでくれると思ったのですが、けんもほろろに。しまいには「まだ帰らないの?」みたいな態度を取られるんです。お兄ちゃんは大ショック。
「こんなに愛しているのに…」
お兄ちゃんはたけちくんが家へ迎えられた日を思い出しました。たけちくんは知人の家の庭で生まれた子猫で、なかなか貰い手が見つからなかった子。お家に迎えられた時には生後4カ月になっていました。臆病でビビリで、でもそこが可愛くて。今まで何匹も猫と暮らしていましたが、お兄ちゃんにとって初めて「愛おしい」と思えた猫がたけちくんだったのです。それなのに…。
たけちくんの「まだ帰らないの?」は4カ月ほど続きます。しかし、お兄ちゃんがお母さんと仲の良い様子を観察し続け、ようやく「帰らない人」と認識できるようになりました。お兄ちゃんは少し安心です。「家族」と思ってもらえるまで、あと少し。
お兄ちゃんが家に戻り2年ほど経った時のことです。元地域猫のシュクルちゃんが家に迎えられることになりました。夫を亡くした猫で、年齢はたけちくんと同じ3歳ぐらい。見過ごせない状況下にあったため引き取ったのです。
そんな事情を知らないたけちくんは、心をかき乱されます。シュクルちゃんと目が合うと「シャー!」「フー!」。知らない猫がいるのがとても怖い。自分の味方を探した時、目に入ったのがお兄ちゃんです。お兄ちゃんなら大丈夫だ。たけちくんはお兄ちゃんを心の安全地帯にし、お見送りやお出迎えを率先して行うようになったのです。
嬉しい誤算のお兄ちゃん、たけちくんを今まで以上に可愛がります。するとたけちくんも安心できたのか、シュクルちゃんにも優しくできるようになりました。毛づくろいをし合ったり、一緒に寝たり。シュクルちゃんの心も落ち着いていきます。
それからまた1年後、今度は2匹の子猫が家に迎えられました。生後2カ月ぐらいの子猫たちは、女の子がつぶあんちゃんで男の子がこしあんくんと名付けられます。またシュクルちゃんの時のように怯えるんじゃないか…、家族は心配しましたがたけちくんは驚きの行動に出るのです。
なんと子猫たちの面倒を見始めたのです。家のルールを教えたり、遊びを教えたり。実に甲斐甲斐しく、子猫たちのお世話を焼きます。お兄ちゃんのお出迎えもたけちくんが先頭に立ち、子猫を引き連れてくるんですよ。出窓から駐車場にお兄ちゃんの車が入ったのを確認すると、玄関に猛ダッシュ!
お兄ちゃんは感無量です。あんなに小さかったたけちくんが、こんなに立派な猫になるなんて。たけちくんへの愛は年々深まる一方です。愛が溢れ過ぎたお兄ちゃんは、得意のイラストでたけちくんたちの姿を描くようになりました。可愛い姿を自分の手で残しておきたい。
イラストは周囲に大好評!グッズ化しても良いんじゃない?とも言ってもらえたので、今は色々と考えているんですって。収益が出たら、綺麗好きのたけちくんのために自動トイレを買ってあげたいなぁ。
お兄ちゃんは現在、離れている期間があったからこそ今があると考えているよう。一緒にいられない時間が、たけちくんへの思いを大きくしてくれました。たけちくんもそう思っていてくれたら良いなぁ。
たけちくんは今日も、出窓から駐車場を眺めます。「お兄ちゃん、早く帰ってこないかな」と。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)
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