■後ろ脚が不自由な猫
銀ちゃん(5歳・オス)は、熊本市愛護センターに収容されていた。大阪府に住む智さんは2匹の猫を自分で保護した後、ひまわりちゃんという猫を熊本県の愛護団体から引き取った。ひまわりちゃんの話を前に進めるうちに、「もう1匹引き取りたい」と思ったという。
智さんは、ひまわりちゃんを引き取る時も、「子猫じゃなくていい、人に懐いていなかったり、ハンディがあったりして、なかなか里親が決まりそうにない子を引き取ろう」と決めていた。そしてネットで見つけたのが銀ちゃんだった。智さんは、ひまわりちゃんを譲渡してもらった団体の代表に問い合わせた。
「当時生後3ヶ月くらいで、下半身付随というほどではありませんが、後ろ脚が不自由でした。四肢で立つこができず、でも、右脚は少しは感覚がありそうだということでした。排泄は刺激してあげるとできると聞きました」
智さんは銀ちゃんを引き取ることにした。
■ハンディキャップや病を乗り越えて
2016年9月25日に銀ちゃんを迎えたが、まず、智さんを悩ませたのは排泄だった。
「団体の代表に教えてもらってやってみたのですが、全部出し切れているのか、銀が不快な思いをしていないか不安でした。かかりつけの病院に通って、尿を出せているかチェックしてもらい、尿がある時と出し切った時のお腹の張り具合を自分で確認できるよう、指導してもらいました」
だんだん智さんも慣れてきて、今では1日4回トイレに連れて行き、膀胱を圧迫して排尿させているという。少し歩くこともできるので、自分でトイレに行くこともある。ただ、銀ちゃんは、そこかしこに腕でぶら下がり、シャーとオシッコをする。これは今でも悩みの種だという。
やがて智さんは銀ちゃんの腰のあたりに柔らかいものがあるのを見つけた。直径1cmくらい。腹壁ヘルニアだった。2016年11月19日、銀ちゃんは去勢手術と腹壁ヘルニアの手術をした。腹壁ヘルニアは全快したが、2017年2月頃、智さんは腰のあたりに膨らみを見つけた。
「銀の食欲も落ちていたので診てもらうと、大量の膿が溜まっていました。譲渡前から持っていた異変でした。抗生剤を飲んでいたのですが、そのうち銀の腰に3箇所穴が開いて、そこから膿が出るようになりました」
CT検査をすると背骨のあたりから膿が出ていることが分かった。
「手術すると、それが引き金になって新たに感染する危険もありました。1歳半くらいになったら免疫ができてきて、自分の免疫で抑え込める可能性もあるということだったので、膿を出しては洗浄して治療することにしました」
かさぶたを剥がしては膿を出すことを繰り返していたら、やがて膿は出なくなり、今では元気に過ごしているという。
■ハンディがあってもできることはさせる
智さんは、銀ちゃんが脚が不自由な子ならではの可愛い座り方をしてくれるところが気に入っている。カリカリ欲しさに後追いしてきて、足にまとわりつくところも愛おしく思っている。
ある日、智さんは銀ちゃんが自分でトイレに行くところを見た。オシッコをしたいという感覚があるようだった。そこで智さんはオムツを外し、それまで使っていたペットシーツもやめた。自らトイレに行く銀ちゃんは、「ぼく、できるもん!」と誇らしげに言っているように見えたという。
「ハンディがあっても少し手を貸してやることで、家の中でなら元気に安全に過ごすことができます。それを教えてくれたのは銀です。この子はこんなんやからと決めつけてはいけないと気づかせてくれました。銀に感謝しています」
智さんは、銀ちゃんの後にもハンディのある猫を引き取ったのだが、
「ハンディがあってもできることはさせます。できないことを手伝いつつ、やりたいようにさせています」と言う。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)
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