青春を送ることは、もはや許されなかった。1943(昭和18)年9月22日、徴兵猶予停止の報に、旧制姫路高校19回文乙(文科ドイツ語専攻)の生徒は心境をつづる。「あと一年の命。遺産を残そう」と。同じく19回文乙の三谷敏一(90)。「高校生の本分は学問。『天皇のために死ぬ』と単純にはいかない。残る思いと死ぬことの矛盾。もがいていた」
同年12月、徴兵年齢が20歳から19歳に引き下げられた。国は若者に、一刻も早く死地へ赴くことを求めた。しかし、その理不尽を受け入れるすべを誰も教えてはくれない。姫高生はカントやデカルトの哲学書、岩波文庫などをむさぼり読んだ。三谷の同級生、岩崎吉則(旧制加古川中出身)は、入営までの揺れる心情を8冊のノートに残した。
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