日本海の近く、城崎郡竹野村鬼神谷(現・豊岡市竹野町)の集落は山に抱かれる。1945(昭和20)年4月13日昼すぎ、爆音とともに上空に海軍機の編隊が現れた。村人たちが見上げると、1機が降下。旋回し、翼を交互に振って去った。「万歳」「万歳」。村人の大歓声の中、京都から疎開中の少年が言った。「あれはお別れのあいさつだよ」-。
およそ1年半前の43年9月、旧制姫路高校の18回生が卒業した。戦時下の措置で就学年限は3年から2年半に短縮され、繰り上げでの卒業。竹野村出身の安達卓也もその1人だった。
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