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第8部 祭り不易流行

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 意地を張り合い、華やかで激しい秋祭りに生きがいを感じる男たち。準備に明け暮れ支える女たち。そして太鼓の音で育っていく子どもたち。祭りを通じて、地域と共に生きる人たちの物語。

太鼓の音で育ってきた
浜の宮天満宮の宵宮。男の子や女の子たちが練り出す屋台を先導する。将来の祭りを担う一員だ=姫路市飾磨区(撮影・斎藤雅志)
浜の宮天満宮の宵宮。男の子や女の子たちが練り出す屋台を先導する。将来の祭りを担う一員だ=姫路市飾磨区(撮影・斎藤雅志)

 「ヨーイヤサァ!」

 法被を着た子どもたちが屋台を先導し、元気な声を張り上げる。

 秋晴れの10月8、9日、浜の宮天満宮(姫路市飾磨区)の例祭。古くから港で栄えた飾磨津の町を各地区の屋台が練り歩く。宮入りからの「台場差し」は高々と屋台を差し上げる力技。祭りの熱狂は最高潮に達する。

 「播州の祭りいうたら、ここが始まり」と当番町の釣(つり)昭良・宮自治会長(71)。「子ども練り衆」として、子どもの先導は江戸時代の記録に残る。宮地区だけが継承する獅子舞とだんじりも、子ども会の役割だ。

 「太鼓の音で育ってきたから、お祭りは楽しみ」と小学6年の楠慶樹(けいじゅ)君(11)。中学生になるといよいよ、屋台運行の担い手として「青年入り」が待っている。

 祭りを守り、伝えていくのは地域ぐるみ。老若男女がいろんな形で祭りを支えている。その努力の先に、男たちが差し上げる屋台の輝きがある。

屋台担い手へ「青年入り」
シデ棒を持ち、屋台に付き添う須加地区の「宿老」=姫路市飾磨区須加
シデ棒を持ち、屋台に付き添う須加地区の「宿老」=姫路市飾磨区須加

 「オッチャン、チョーバに来てか」

 10月1日、「子ども触れ」の声と太鼓の音が日の暮れた町内に響く。飾磨津では祭りを1週間後に控え、本部である「帳場」を公民館に開いたことを子どもが触れて回る。

 浜の宮天満宮(姫路市飾磨区)の当番町、宮地区の帳場。女性の手でおでんやつまみが用意され、壁には巻紙が張り出される。自治会役員や氏子総代に続き、祭典委員長を筆頭に、屋台運行を担う幹事長、太鼓を打つ乗り子、屋台を飾り付ける道具方-と名前がずらりと並ぶ。

 「御花(おはな)」という寄付や差し入れが届き、張り出しが続く。その中で、「青年入り」と赤字で記された名前は、赤石一晟(いっせい)さんと川崎琉雅(りゅうが)さん。中学2年になり今年がデビューだ。

 祭り当日、屋台に張り付く2人の姿があった。汗を噴き出す練り子に飲み物を配る。台場差しが始まる。「怖いけど、憧れる」。たくましい背中を追いながら一歩ずつ、重い役を担っていく。

 姫路市の文化財専門員として調査した宇那木(うなき)隆司・琴丘高校長(59)は「組織化された年齢集団が祭りの継承を支えている」と指摘する。

 古くは若衆と呼ばれた青年組織が祭りの担い手だ。それが今も自治会の中で機能し、子ども会や婦人会も役割を分担する。老人会はシデ棒を手にして屋台に付き添う。その役を「宿老(しゅくろう)」と呼ぶ地区があることも、歴史の名残を感じさせる。

 「正直、生きがい的なとこあるからね」と釣(つり)昭良・宮自治会長(71)。祭りは地域と共に生きている。

転入組も荒技「台場練り」
本宮で激しく練り合い、伊達綱を揺らす(右から)東堀、北細江、清水地区の屋台=姫路市飾磨区恵美酒、恵美酒宮天満神社
本宮で激しく練り合い、伊達綱を揺らす(右から)東堀、北細江、清水地区の屋台=姫路市飾磨区恵美酒、恵美酒宮天満神社

 「男前の練りを見せつけたれ!」

 飾磨津の恵美酒宮天満神社(同)の宮元・東堀地区。屋台の出立(でだ)ちに斎藤誠二青年会長(45)が力強く声を上げ、男たちが心を一つにする。

 伝統的で強固な組織は閉鎖的にも思えるが、「来たい人は拒まない」と斎藤さんは言う。自身、たつの市の出身で二十歳を過ぎての転入組。屋台は触ったこともなかった。

 マンションで地域のスポーツ行事に誘われた。チームの主力は青年会のメンバー。「一緒に飯食べて話をした流れで」祭りに当日参加した。「やるんやったら、組織に入る方が楽しいんやね。性格的にハマる役割が不思議とあるし、先輩は歓迎してくれる」。翌年にはもう、積極的に準備段階から関わり、昨年推されてトップとなった。

 「自分みたいな転入組がやってると誘いやすい。休みはつぶれるし、家族や会社の理解もいるから、来るか来んかはその人次第やけど」

 東堀の屋台がお宮になだれ込む。泥台を24人の練り子が肩だけで担ぐ荒技「台場練り」に歓声が上がる。激しい練り合わせに場がどよめく。

 開かれた組織の新たな担い手が、祭りを生き生きとさせていく。

しきたりを守り、祭りを継ぐ
氏子の家の縄張りに付けられた御花を会計が集める=姫路市飾磨区東堀
氏子の家の縄張りに付けられた御花を会計が集める=姫路市飾磨区東堀

 伝統行事の衰退がいわれる中で、華やぎを増す播州の秋祭り。だが、人口流出や少子高齢化はここでも、無縁ではない。

 「よう見たら分かるけど」。ある地区の帳場で役員が巻紙を指さす。「同じ名前が出てくるやろ」。役の兼任を余儀なくされる状況がある。

 「これも風流で残したいけど」。町を練りながら、玄関先の「御花」と書かれた三角折りの半紙を示す。「後花(あとばな)」と呼ばれる、祭りの翌日に清算に回る御花だが、平日の人手も減り、飾磨の恵美酒宮では東堀地区、浜の宮でも氏子数軒でしか見られなくなったという。

 「しきたりを守ろうとするのは、祭りを続けていく意志の表れ」だと宇那木さん。そのために、女性や他地域からの参加の幅を広げることもあっていいと考える。「祭りの現代的な意義は、地域のつながりを生み出すこと。玄関先から屋台が通るのを見るだけでも参加で、それぞれの形で一翼を担えば、コミュニティーの輪が広がっていく」

 10月15日。松原八幡神社(同市白浜町)の「灘のけんか祭り」本宮。旧灘七カ村の屋台がお旅山へ進み、通りの家の引き戸が開け放たれる。町並みもまた、祭りを継承するための舞台に見える。

 翌朝。通りが地域の人たちにより清められていく。お宮やお旅山では小学生たちも後片付けに参加する。祭りの終わりは、祭りを継いでいく新たな一年の始まりでもある。

(記事・田中真治 写真・大山伸一郎、斎藤雅志)

余白の余話
神戸新聞NEXT
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 浜の宮天満宮の祭りで宮地区はササを立てる。ササを取る場所も難しくなる中、今年はたつの市御津町へ。加家(かけ)地区の屋台は90年前に“嫁入り”した宮浜屋台(宮・大浜地区)で、約20年前からあいさつに訪ね合う仲。とんとん拍子に話がまとまり、「来年はシデ棒の竹も」と笑い合う。

 恵美酒宮天満神社の氏子町でササを立てるのは玉地地区だけ。こちらも調達先は、屋台が嫁入りした姫路市豊富町の金竹(かなたけ)地区だ。飾磨津の祭りには屋台譲渡を縁とした、こんな地域交流もある。

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