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自分たちの「遺影」を前に、穏やかな時間を過ごす加古博一さん、知湖さん夫妻=加古川市内 自身の葬儀で上映するDVDを制作した青柳進さん=高砂市高砂町鍛冶屋町
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自分たちの「遺影」を前に、穏やかな時間を過ごす加古博一さん、知湖さん夫妻=加古川市内

自身の葬儀で上映するDVDを制作した青柳進さん=高砂市高砂町鍛冶屋町

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  • 自身の葬儀で上映するDVDを制作した青柳進さん=高砂市高砂町鍛冶屋町

自分たちの「遺影」を前に、穏やかな時間を過ごす加古博一さん、知湖さん夫妻=加古川市内 自身の葬儀で上映するDVDを制作した青柳進さん=高砂市高砂町鍛冶屋町

自分たちの「遺影」を前に、穏やかな時間を過ごす加古博一さん、知湖さん夫妻=加古川市内

自身の葬儀で上映するDVDを制作した青柳進さん=高砂市高砂町鍛冶屋町

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■遺影、DVD、自ら演出

 おしゃれをした老齢の男女が、笑みをたたえていた。一人ずつフレームに収まる写真は、加古川市の加古博一さん(83)と知湖(ともこ)さん(84)。夫婦が80歳ごろに撮影した「遺影」だ。

 写真だけではない。昨秋、生前契約を済ませた葬儀の仕様書も、2人それぞれの分がある。明細書には50近い項目が並ぶ。遺影の額は、博一さんが黒縁、知湖さんはより華やかなものに。ほかにも装花や供物を選び、食事も通夜から初七日まで4回分決めている。

 式場は自宅近く。葬儀会社の担当者と何度も打ち合わせ、博一さんは式場を見学して祭壇も見比べた。「死んでから決めたのでは、相当バタバタするはず。落ち着いて進めることができた」

 きっかけは80歳を境に現れた体の異変。知湖さんが脳梗塞で倒れ、博一さんは心臓に動脈瘤が見つかった。知湖さんの義兄が登山中に道に迷って亡くなり、不慮の事故も身近に感じた。「真剣に考えなあかん、と思うようになった」。合葬式墓地を予約し、延命治療を望まない旨の書面を健康保険証と一緒に持ち歩く。

 遺影は、葬儀会社が系列の結婚式場で開いた撮影会で撮った。「長寿祝い」との触れ込みだったが、遺影の準備でもあるとぴんと来た。葬儀費用は、知湖さんの方が20万円近く高い。「花いっぱいにしてあげたい」。博一さんの心遣いだ。

 読経してもらうため、昨年、80代で初めて寺の檀家になった。「死ぬのは怖い。けど、穏やかな人生を送るために、死ぬときのことを考え、準備しないと」と博一さん。今の2人の表情は、遺影の写真に負けないくらい穏やかだ。「夫婦の残された方も、娘らも、困らずに済むわね」。知湖さんがそっと涙をぬぐった。

 「自分の死を前提にした事前相談が増えてきた」。加古川の葬儀場「すみれホール」運営会社役員、関千咲さん(51)はそう感じている。「皆さんが気にするのは、何よりも金額のこと。死後、家族に迷惑を掛けないように、と心配して来られる」。中には複数の葬儀場を巡り、金額を見比べる人もいる。

   *    *

 一代で築き上げた会社と後継者の息子を、自分が亡き後ももり立ててほしい。高砂市の会社役員青柳進さん(71)は自身の葬儀で流すDVDを作った。

 タイトルは「今は亡き青柳進さんを偲んで」。貧しい家庭から身を立て、会社と地域のために走り続けた生涯をたどる。「皆さまの横にいることはかなわなくなりましたが…」。最後に、青柳さんがカメラに向かってメッセージを伝える。

 3年前、業者に依頼。通夜用と告別式用を用意している。「生きているうちに人に見せるもんでもないし、自分で見返すもんでもない」。あくまでも生前の感謝を伝え、死後を託すのが目的だ。

 今は健康そのもの。仕事も現役だ。DVDを元気なうちに準備したのは「人より何でも先にやる性分が出たのかな」。「いつ死んだてかまへん」の心意気で、今日を生きる。(広岡磨璃)

2019/1/23
 

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