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(2)災害現場から 日本医大千葉北総病院・山本保博病院長
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最も重要な最初の3日 情報ネットの確立が急務

 救助段階では一分遅れると死者が一人増え、逆に一分早ければ一人助かると言われている。阪神大震災では、地震発生後の交通大渋滞で、救急車や消防車といった緊急車両の動きがとれなくなった。このような中で、どれだけの人が搬送の手だてもなく命を落としたことだろう。

 救急搬送は陸路だけでなく、空と海の利用を考える必要がある。

 空路の場合は今回、県や市などからの要請主義やヘリポートの問題はあったにもかかわらず、約二百人の患者の搬送に利用されたという。

 東京消防庁によると、救出・救助した百二人中、生存者は二十六人であった。これらの人々は、いすれも災害発生後三日以内に救出された人々で、このことからも大災害時の救急医療は、三日間が最も重要であることが分かる。

 また、がれきの下敷きになった手足の圧迫に関しては、十二時間くらいたつと、クラッシュ(挫滅=ざめつ)症候群の危険が高くなる。

 このことから情報が全くなくとも、発生と同時に現場に出動可能な医療チームと医療コーディネーターの育成を考えなければいけない。

 また大規模な災害の現場では、患者のトリアージ(選別)を考えなければならない。搬送に耐えられない超重傷患者や、心肺停止状態になっている患者を、広域搬送させるために、多数の生命を見捨てるわけにはいかないからである。このことは一般住民の皆さんにも理解してもらう必要がある。

 そのためには災害医療に関して種々のガイドラインを作成すべきだ。トリアージだけでなく、クラッシュ症候群、災害症候群そしてPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断、治療などについてのガイドラインの早期検討が必要だろう。

 次に必要なのは、情報ネットワーク体制の確立である。今回の災害では、病院間、消防本部、地方自治体での情報ネットワーク体制が整っていなかったために、それぞれの病院の被災状況、負傷者受け入れ状況などを把握することができなかった。

 このため量的、質的に対処できない負傷者をどこの病院に運んだらよいのかなど、さまざまな混乱を来した。

 また、ほとんどの施設が非常用として通常の電話回線を考えていたことも情報の把握ができなかった一つの要因であった。

 災害医療チームの派遣や被災地の医療を確保するため、被災地の医療情報は早くから必要となる。医療情報を収集する手段を確保するために、NTTに災害特別回線を設置し、緊急時の使用に備えるとともに、病院の通信回線を耐震化し、無線送受信装置を併設するなどの情報収集体制が必要だ。

略歴 山本保博(やまもと・やすひろ)1973年日本医大卒。エチオピア、メキシコなど海外の災害現場に救援医療チームとして出動した経験多数。94年日本救急医学会災害医療検討委員。日本医大千葉北総病院長。

1995/2/22
 

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