重要法案の審議日程が立て込み、あわただしさを増す終盤国会。参院に市民立法案を提出した田英夫(社民)らは、二十二、二十三日と、各会派に審議入りの要請を続けた。
自民は、本会議場でようやくつかまえた。新進の参院幹事長・永野茂門は「所属議員から話は聞いている。恒久法をつくるという趣旨は分かる」としながらも、「新進には衆院に出した法案がある。対応を考えたい」と慎重に言葉を選んだ。
民主・新緑風会は、議運理事の伊藤基隆が応対した。部屋を出てきた田は「災害対策特別委員会への付託を申し入れた。議運で社民、共産、民主・新緑風会の三会派の理事が提起してくれるはずだ」と説明した。
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田は二十一日、土石流災害に襲われた秋田県鹿角市を視察した際、社民党独自の公的支援案を発表している。
震災時、首相だった村山富市も同席。村山は「阪神大震災では緊急対策に欠ける点があった」と認め、独自案を説明した。内容は市民立法案とほぼ同じだが、全壊で一律百五十万円とするなど支給額も所得制限も大幅に切り下げた。
「与党として実現可能な線を考えた。自民を含め各党と話し合いを持ちたい」と村山ら。阪神大震災へのそ及総額は五、六千億円と試算、市民立法案の約半分に抑えた。
社民案は今後、市民立法案とすり合わせ、修正案として提出される可能性もある。党首の土井たか子も「市民法案のままでは、国会では理解を得にくい。修正を考える必要がある」との意向を田に伝えている。
しかし、調整は今後の課題に残され、市民立法案を日程に乗せることが先決だった。
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野党三党案の審議入りを図る新進の冬柴鉄三は二十三日の衆院議運理事会で、「二十七日の本会議で趣旨説明を」と要求した。
共産、民主、太陽の三党は質疑を行う、と応じた。自民の態度は変わらず、冬柴に問い返した。「参院で出た(市民)法案は、新進の議員も提案に回った。二つの法案の関係をどうするのか。八千億円の財源はどう考えているのか」
冬柴は「貸付制度の部分をはずし、(支援金)給付だけなら千三百億円で済む」と、修正案を出す用意も示したが、やり取りはそこで途切れた。
国会では、週明けの二十六日から参院が、臓器移植法案などの本格審議を始める。六月十八日の会期末まで三週間余り。懸案を処理し切れない状況に、自民党内には会期延長論も出始めている。
市民立法案、野党三党案とも、まだ見通しは立たない。調整も進んでいない。田は「委員会付託を提案できるのは会期末近く」と話し、冬柴も「今国会での成立は非常に厳しい」と、秋の臨時国会も視野に入れる。次につなぐ方策も模索しているように見える。
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公的支援実現の住民投票は最終日の二十五日、神戸・三宮などで街頭活動を繰り広げた。賛成票を投じた男性の用紙の裏は、鉛筆の文字で埋まっていた。
「私たちの心に届く国の支援を望みます。今は国に見捨てられたような気持ちでいっぱいです。この苦しみや悔しさを、次の災害の被災者に味わってほしくありません」
(敬称略)
(社会部・桜間裕章、森玉康宏、坂口清二郎、東京支社・藤井洋一、小西博美、下土井京子、写真部・三津山朋彦)=第15部おわり=