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(2)調整の模索 2法案の溝に議員苦悩
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 参院に提出された被災者支援法案アピールのため、市民グループが国会周辺を行進していた二十日午後、衆院第一議員会館で「被災地選出国会議員の会」が開かれた。

 新進党の呼び掛けで、兵庫県選出の衆・参二十七人の議員のうち、十一人が集まった。

 市民立法案に先立って、新進・民主・太陽の野党三党が衆院に提出した支援法案は、議院運営委員会に止まったまま。案づくりの中心になった新進の衆院議員、冬柴鉄三が「二百人を超す議員が賛同する法案が、一度も審議されず廃案になるようなことは許されない」と口火を切った。

 与野党の図式を示すかのように、自民議員は秘書しか姿を見せなかった。勢い、ほこ先は社民党の中川智子、共産党の藤木洋子に向けられ、冬柴は「それぞれの党の議運の議員に、審議入りを働き掛けてほしい」と続けた。

 衆院五百議席のうち、新進・民主・太陽を合わせ二百二議席。社民の十五、共産の二十六を加えると、自民の二百四十四にほぼ肩を並べる。法案を日程に乗せるには、社民、共産の賛同が不可欠だった。

 その発言に、市民立法案の発議者となった参院議員、本岡昭次が割って入った。

 「参院でも法案を出した。そちらの話ばかりでなく、二つの法案の調整をどうするかという議論も持っていただきたい」

 冬柴は「財源はどうするのか。両法案の調整は難しい」。長いテーブルを囲んで応酬が続いた。

 新進の赤羽一嘉が「互いに反対するのでなく、多数派工作に連携を取ればいい」と収めた。会議終了後、本岡はなお法案の調整を求めたが、冬柴は「参院のことは参院で」と去った。

    ◆

 提出前、水面下ですり合わせの動きもあった二つの法案は、時間切れの形で別々に舞台に上がった。被災者支援の目的は同じだが、内容は隔たっている。

 市民立法案が今後の災害も念頭に、阪神大震災へのそ及を盛り込む恒久法なのに対し、新進案は阪神大震災に限った特別法。そ及の考え、支援の対象が違う。

 新進側は「なぜ阪神大震災だけそ及し、それ以前の災害に適用しないのか。答えが出せない」と、そ及の手法に否定的だ。直接給付対象は、市民立法案が「全・半壊世帯一律」、新進案は「所得が激減した世帯と要援護世帯」とする。

 「これまでも生活支援金など政府の支援策はあった。その対象にならず、今も困っている人への支援に絞らないと、国民の理解は得られない」と新進側。市民側は「対象を限定した支援策では、生活再建は実現しない。大災害による生活基盤の破壊は、中間階層でも起こる」と反論する。

 財源は、市民立法案が一兆一千億円、新進案が八千億円と試算されている。

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 「被災地選出国会議員の会」で、共産の藤木は「二つの法案が、ともに成立すれば被災者支援メニューが増える」とも発言した。が、同党書記局長・志位和夫は十五日、「市民の法案の賛同を多くの党派に呼び掛け実現したい」と表明。党として新進案はまだ検討対象になっていない。

 新進側も、冬柴、赤羽と同じ旧公明党出身の参院議員、片上公人(平成会)が市民案の発議者に名前を連ねる。石井一二(同)も同案に賛成している。しかし、冬柴らは「譲ることはできない」と話す。

(敬称略)

1997/5/22

 

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