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(6)公的支援 政治動かせ 訴え続く
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臨時国会向け 市民ら正念場
 「被災者は一歩もひかない」。のぼりには、そんな文字が躍っていた。

 通常国会で継続審議となった公的支援の市民立法案。七日、「『公的援助法』実現ネットワーク」のメンバーは、秋の臨時国会での成立を目指し、神戸市兵庫区の湊川商店街周辺で街頭活動を行った。

 「夜も眠れない」と、署名に応じた女性(63)はせきを切ったように話した。

 マンションが倒壊し、五回の転居を重ねた。民間賃貸住宅の家賃負担は重い。「再建できても年金生活でローンは組めない。震災後の借金返済も迫っている。もう頑張りようがない」

 十四日、法案に賛同する本岡昭次・参院議員、藤木洋子・衆院議員らと、市民=議員立法実現推進本部代表の作家・小田実さんらは、兵庫県の貝原知事、神戸市の笹山市長を訪ねた。

 「継続審議といっても審議入りのめどはない。『廃案だ』と話す自民党幹部もいる。状況は厳しい」

 協力を求める本岡議員らに知事、市長は「支援策が必要との考え方は同じ」と口をそろえた。エールの交換にとどまったが、協議を続けることは決まった。

 法案の賛同議員らは、国会閉会中の公聴会や現地調査を求める。しかし、動きはない。議員らは夏休みに入る。九月の臨時国会まで時間は多くない。

 法案を提出した田英夫・参院議員(社民)は「問題は自民党対策だ。表通り、裏通りから仕掛けたい」と話す。「動かすには修正案の検討が必要だが、かなり難しい。法案をつぶした党は、次の選挙で勝てないような形にしなければ」

    ◆

 十七日の全国知事会議で、兵庫県案をベースに、被災者への生活再建支援を目的にした基金構想が特別決議された。

 二千五百万人の署名を集めた「自然災害に対する国民的保障制度を求める国民会議」も、基金制度を後押しする方針だ。目指してきた住宅再建制度創設は壁にぶつかり、「二千五百万人の力をどう生かすか」と検討した結果だった。

 国民会議には、日本生協組合連合会、労働団体の連合、全労済協会などが集まる。四日の代表者会議で、事務局が「基金制度実現に向け、与党議員への働きかけを強めてほしい」と呼びかけたのに対し、「与党重視」の姿勢に異論が出た。

 だが、八日にはメンバーが、「日本を地震から守る国会議員の会」幹事長の柿沢弘治衆院議員(自民)に協力を要請している。

 依然、消極的な霞が関の姿勢に、兵庫県幹部は「政治ベースで話を進められるかどうかにかかっている」と話す。

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 二年半を過ぎても進まない生活再建。被災地の願いに答えは返ってくるのか。

 十八日夜、「公的援助法」実現ネットワークのメンバーは九州へ向かった。

 雲仙・普賢岳被害の長崎県島原市、土石流災害に襲われた鹿児島県出水市、五月に震度6弱の地震があった同県川内市など各地を回り、災害に備える制度の必要性を訴える。「温度差」を埋めるため、静岡市へも出かける予定だ。

 ネットワークの中島絢子事務局長らは訴える。

 「ビラを配ったこともない人たちが動き、市民の提案が法案になった。廃案を免れて継続審議になった。市民が動くことで事態は動く。自分たちで訴え、世論をつくるしかない」

(社会部・桜間裕章、西海恵都子、磯辺康子、網麻子、長沼隆之、経済部・松井元)=おわり=

1997/7/22
 

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