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(3)市場再建 逆境にスーパー攻勢
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震災関連融資 返済開始迫る
 仮事務所の表に新しい「新甲南市場復興株式会社」の看板が掛かる。すぐ裏手で八階建ての新市場が十一月の完成を目指して急ピッチで進んでいる。

 だが、社長の西尾静夫さんの口調はぶ然としていた。「なぜいま、ここで、なのか」

 神戸市東灘区の同市場は震災後、十二店主が仮店舗で営業、そのままスクラムを組んで、市民から株主を公募、被災地では唯一という会社方式で再建に取り組んだ。

 東へわずか一キロ、大手スーパー・ダイエーが、ゴルフ練習場跡地での出店を表明したのは今年一月だ。売り場面積七千平方メートル。九八年九月に総合スーパーとして開店する計画だった。

 大店法に基づく調整が進む。同市場は近くの商店街などと、規模縮小の要望を出している。が、会合を開くと「投資したうえ、売り上げを伸ばすことができるのか」と不安が漏れる。

 西尾さんは話した。「われわれも、各店が集まりスーパーのように販売する『セルフ方式』を考えている。それに期待しているが、ビル建設費は約二十三億円。国、県から約六億円を借り入れ、返済には、震災前の二倍以上の売り上げを確保しなければならない」

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 再建途上の被災地にスーパーの進出が相次ぐ。神戸市内へ出店を表明したスーパー(五百平方メートル以上)は八店。全壊した酒蔵など新たな更地が生まれた東灘区に五店が集中し、うち三店は開店した。

 コープこうべの「コープミニ」も、二十九店から三十六店に増えた。大店法の規制を受けない五百平方メートル未満のスーパーは数もつかめていない。

 ある商店主は「今、被災地でどんどん増えて元気なのは、コンビニエンスストアだけ」と苦々しげだ。

 ローソン、セブン・イレブン・ジャパン、ファミリーマートの大手三社のコンビニエンスストアは、震災前の二百五十八店から四割以上増え、今年六月末で三百六十六店。セブン・イレブンは震災後が初めての神戸進出だった。

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 被災地では、中小企業支援のため、最高三年の据置期間を設けた震災関連融資が実施された。

 債務保証をしている兵庫県信用保証協会によると、利用者は四万七千十一件、約五千四百二十一億円。この本格返済が、来年四月以降に始まる。

 「借金で再建した商店主は、いわばマイナスからのスタート。売り上げを伸ばすことが前提になる。震災前からの融資で二重、三重の負債になっているケースもある」と、同協会企画部長の三木敏弘さんは話す。

 神戸市灘区の市場の総菜店主は打ち明けた。

 「震災関連融資千二百万円と預金のほとんどをつぎ込み、本格再建を果たした。しかし、近所に食品スーパーがオープンし、多くの客が流れた。売り上げは震災前の約四分の一。このままではとても返済はできない。再建は失敗だったか」

 据置期間延長を求める地元の要望に、国も前向きの姿勢を示す。しかし、問題を先送りするだけという厳しい見方もある。

 三木さんは「どれだけが、返済に耐えられるか。正直言って、まったく見当がつかない」と話す。「二年半たっても、状況は芳しくない。返済が始まれば、破たんが相次ぐことも想定される」

1997/7/19
 

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