震災五年を前に、被災地の公的仮設住宅はほぼ解消し、恒久住宅の確保は一つの区切りを迎えた。だが、復興区画整理地区では、事業の遅れで再建できないとの声が寄せられるなど、住まいの再建が最終段階となるにはまだ時間がかかりそうだ。再建を果たした人の多くも、ローンの負担増などで生活設計の見直しを迫られている。さらに、元のまちに戻った人の四割が「住みにくくなった」と答えるなど、地域コミュニティーの再生も新たな課題となっている。一方、生活の復興を支える仕事の問題は、長引く不況が色濃く影を落とす。回答者の七割近くが年収減を訴え、小売り・自営業者は、大幅な売り上げ減や資金繰りに苦闘している。ハード面の復興が着実に進んでも、生活の復興は停滞し、深刻化さえする被災者の姿が、アンケート結果から浮かび上がる。
(尾形 宏文、渡辺 裕司)
2000/1/12
「震災5年・被災者追跡アンケート」は、震災2、3、4年と同様に、神戸市の重点復興地域の一つの東灘・深江地区と、土地区画整理事業対象地域の須磨・千歳地区の2カ所で実施した。今回は、これまでのアンケートの回答者を中心に500世帯に調査用紙を郵送した。
深江地区は東灘の南部にあり、マンションなどの共同住宅や一戸建ての民家が多く、古くからの商店街もある。全半壊が4割以上で、259人が亡くなった。 また、千歳地区は、ケミカルシューズ関連の町工場や民家、飲食店などが密集していた。地震後に火災に襲われ、9割の世帯が全焼、全壊した。