記事特集
阪神・淡路大震災の被災地は十七日、あの日から「七年目」を刻んだ。最大の被害を受けた神戸では、寄せられた支援に感謝の思いを表す「21世紀・復興記念事業」が同日、開幕した。九月末までの二百五十七日間、行政と市民が一緒になって四百を超えるイベントを繰り広げ、市民ランナーが「ありがとう」のメッセージを全国に伝えていく。一方、七年目の足元に目を凝らすと、被災者を取り巻く問題は個別細分化し、解決策は見えにくくなっている。だが、乗り越える努力を続けながら、未来も見つめたい。開幕セレモニーの会場には、小・中学生の「あしたに向かって踏み出そう」の歌声が響き渡った。(西海 恵都子)
震災で受け取った優しさや思いやり。記念事業は感謝の気持ちを伝えながら、ここまで復興したまちを披露するため、花や光などをテーマにした多彩な催しを予定する。
午後五時四十六分。神戸市役所南の東遊園地にある「希望の灯(あか)り」前。全国にこの灯りを届ける市民ランナーらが見守る中、女優の竹下景子さんがゆっくりと語り始めた。
「みんなの心を一つに あつめれば
なんだってできることを知った
手をつなごう
となりの人と向き合おう」
女子中学生がつくった詩に、あのころを思い起こすかのように遠くを見つめる参加者。市民ランナーは感謝の気持ちとともに、震災で得た「支え合う心」を全国に伝えていく。
「助け合う、支え合う。神戸の人々はきっとその思いを忘れることはないでしょう」。主会場のメリケンパークでも、市民が七年目の思いを語った。
「県外で暮らす人、心を閉ざしている人のことも忘れないで」。記念事業の開催に、「お祭り騒ぎをする時期ではない」との批判もある。
市職員と市民らでつくる記念事業事務局は「成功は真の市民参画を果たせるかどうかで決まる」と言う。イベントが地域の再発見につながる。何よりも、過程を大事にしたいという。
被災地は今、思うように復興が進まず、厳しい現実に直面している。一方で、十年間の復興計画は仕上げの時期に入る。兵庫県や神戸市は、残された課題解決のキーワードに「参画」や「協働」を掲げる。
震災で心にとどめた人のぬくもりや優しさ。心を合わせるという「原点」を見つめ直したこの日、被災地は新たな気持ちで明日への一歩を踏み出した。
2001/1/18