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阪神・淡路大震災の被災者に、国と自治体が貸し付けた「災害援護資金」の未償還が依然、約二百五十一億円に上り、貸付総額の19・2%を占めていることが十日、兵庫県の調べで分かった。二〇〇六年の予定だった国への償還開始は五年延長されたが、約四十五億円は回収の見込みがなく、なお厳しい被災者の生活実態を反映している。加えて、焦げ付き分は将来、自治体が全額肩代わり償還を迫られ、被災各市の財政を圧迫する恐れが出てきた。(畑野士朗)
災害援護資金は震災後、兵庫県内で約五万六千四百件、約千三百九億円が貸し付けられた。〇七年九月末現在、償還されたのは約千二十九億円。全額償還は約三万八千八百件で、総件数の70・5%。
一方、未償還約二百五十一億円のうち、約二百七億円分は、月千円からの返済を認める「少額償還」に応じているが、この方法では償還期限までに全額返済される可能性は低い。残る約四十五億円は、借受人が死亡、行方不明になるなどの「徴収不可能」「徴収困難」となっている。
また、償還が免除されたのは千三百七十一件で約二十八億円。償還免除になれば、自治体の国への肩代わり償還も免除される。しかし、免除は、要件が「借受人が死亡し、相続人もなく、保証人も破産している」などと厳しく件数は多くない。
被災各市は、悪質な滞納者に六十八件の訴訟を起こし、百八十八件の強制執行をしているが、県は「一部の市で滞納者の把握が進んでおらず、さらに徴収努力が必要」としている。
メモ
【災害援護資金】
災害弔慰金法に基づき、全半壊世帯に350万円を上限に貸し付ける制度。原資は、3分の2を国が被災自治体に貸し、残りは自治体が負担する。焦げ付き分は国への償還を含め、自治体が全額を穴埋めしなければならない。2006年5月から国への償還が始まる予定だったが、被災地の要望などを受け、国は同年1月、償還期限の5年延長などを決めた。