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(5)合併自治体 デメリット補う「自助」
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 二〇〇七年の能登半島地震で全世帯の12%が全壊し、最も大きな被害を受けた石川県輪島市の門前地区。年の瀬、再建が進む商店街を見渡しながら、星野正光区長(64)は訴えた。

 「行政に頼っていたら、生きていけない」

 門前地区は、旧門前町と輪島市の合併で同市の一部になった。その約一年二カ月後の〇七年三月二十五日、激震が襲った。輪島市門前総合支所(旧門前町役場)は通信網が遮断され、本庁と直接連絡を取れないまま、集まった職員四十人が対応に追われた。

 旧輪島市域も被災していた。このため、支所要員の本格的な増強は一週間後だった。しかし、支所から現場に派遣された本庁職員は、通行止めになった幹線の裏道が分からず、引き返して来ることもあった。

 合併のスケールメリットはほとんど生かされず、支所職員らの不眠不休の対応にも限界があった。それを補ったのは、住民の「自助」だった。

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 介護が必要な高齢者らの安否確認では、地元の民生委員らが活躍した。こうした要援護者の対策を備えていなかった市の要請を待たず、戸別訪問を重ねた。

 避難所の開設や避難誘導、給水や物資配給などの連絡、災害ごみの管理でも各地区が自主的に動いた。星野区長は「まず自分たちで何とかしようという意識が強かった」と振り返る。

 輪島市は合併して間もなかったため、門前総合支所は旧町役場当時の職員数が維持されていた。しかし、合併後の支所(旧町役場)の職員は、年の経過に連れ、減っていくのが常だ。一方で、全国で相次ぐ自然災害は、次々に問題を突き付け、行政の課題は増すばかり。自助に注目が集まる。

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 兵庫県内の自治体も自助に力点を移し始めている。

 合併から九年近くを経た篠山市。支所職員数は、西紀が三十二人から九人に、丹南が四十四人から十一人に、今田で二十六人から八人に、それぞれ合併直後から減った。

 災害時には、一定の本庁職員が近くの支所に応援に入り要員を確保するが、全職員数が合併直後から二割近く減り、初動体制の弱さは否めない。

 そこで同市が力を入れるのが、自主防災組織の活性化だ。庁内で検討委員会を立ち上げ、自治会長を代表とする形式的な組織から、適任者をリーダーにした実質的組織への衣替えを目指す。

 西本敬二・防災課長は「責任を投げ出すわけではないが、行政が何でもやるという姿勢を見せることが、住民に『何でもしてもらえる』という意識を生んでいなかったか」と自問する。

 今、全国で「防災基本条例」を制定する動きが広がっている。行政主体の災害対策法や自治体の地域防災計画に対し、条例は住民の「自助」を基本理念とする。

 「住民組織が行政の下請けではなく、地域の自治を担う組織になれるかどうか、が重要だ」と独立行政法人防災科学技術研究所の永松伸吾・特別研究員(減災政策)。自主防災組織のあり方は、合併後の自治体と住民の関係を問うことにもなる。

2008/1/16
 

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