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(3)企業防災 計画は中小にこそ重要
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 「会社をつぶしたくない」。神戸市内の制御機器製造メーカー「昭和精機」の専務、藤波智二さん(31)は昨年秋、神戸商工会議所の中小企業向けセミナーに参加し、あらためて思った。

 テーマは、災害時の事業継続計画(BCP)の導入だった。BCPは、災害の影響を最小限に抑えて早期復旧を目指し、優先業務などを定める。その内容は、社員の安否確認など従来の災害対策に加え、指揮命令系統の明確化▽被災地外での代替生産設備の確保▽情報システムのバックアップ-などを含む。

 セミナー参加後、藤波さんはBCP策定を決めた。「阪神・淡路大震災の経験で重要性は分かる。安定供給こそ企業の務め」と思ったからだ。

 しかし、藤波さんのように行動を起こす人は少ない。BCPは大手にこそ広まりつつあるが、中小企業にはまだ縁遠い。

 中小企業庁のアンケートによると、二〇〇六年、全国十カ所で開いた「BCP策定セミナー」に参加した三百八社のうち、「BCPを策定した」と答えたのは九社にとどまった。

 中小企業の防災対策などを支援するNPO法人「ビジネスアシストこうべ」の萩原正五郎理事(59)は「中小企業経営者は非常に多忙。カネ、人、時間がない」と話す。

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 中小企業を取り巻く現実は厳しいが、〇七年七月の新潟県中越沖地震は衝撃だった。

 被害の大きかった柏崎市。大手自動車部品メーカー「リケン」の工場で設備が倒れ、国内シェア五割というエンジン部品ピストンリングなどの生産が止まった。リケンは代替生産の体制がなく、自動車メーカーも取引先が被災した場合のBCPは作っていなかった。このため、全自動車メーカーの生産がストップした。

 一方、リケンは〇四年の新潟県中越地震の後、工場を耐震化しており、壊滅的被害を回避した面があった。加えて、メーカー各社からのべ約八千人の応援を受け、一週間後から順次、操業を再開できた。

 京都大経済研究所の丸谷浩明教授は「耐震化していなければ、早期復旧は極めて難しかった。中小企業も耐震化などの備えをして、ゼロからの再開になるのを避けるべきだ」と強調する。

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 「BCPは、体力のない中小企業にこそ重要」との考えから、神戸商工会議所の小林和弘主査(32)は、今年もセミナーを開く。

 「商売より優先して、とまではいえないが、とりあえず考え方を知ってほしい。緊急連絡先の名簿整備などから取り組んでもらえればいい」

 丸谷教授は「BCPは、担当者が頑張っても社内の理解が得られないことも多い。他社と励まし合い相談し合う環境をつくるため、地域の経済団体などのサポートが必要」と説く。

 新たな動きも生まれている。下請け企業などで組織する兵庫県中小企業団体中央会と商工中金神戸支店は〇八年度、BCP策定を決めた企業に優遇して融資する制度を始める。

 「大震災を経験した兵庫だからこそ、(BCPを)普及させたい」。同支店の鈴木庸史次長が力を込めた。

2008/1/14
 

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