連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

(2)住宅耐震補強 薄い危機感 施工数低調
  • 印刷

 寒風が吹いた正月三日、新潟県柏崎市の仮設住宅に暮らす主婦、石黒光子さん(61)は近くの自宅跡に足を運んだ。

 昨年七月の中越沖地震で木造二階建てのわが家は全壊。一家は仮設に入居し、家は解体した。以来、敷地内に残る小屋へ保管した漬物や野菜を取りに通う。更地に立つと、いつも寂しくなる。

 自宅は三年前の中越地震でも被災し半壊した。その際、壁は合板や筋交いで補強したが、ひびの入った基礎は手つかずだった。地盤が弱かったこともあり、中越沖の追い打ちで基礎に引きずられるように壊れた。石黒さんは「基礎も補強していたなら」と悔やむ。

 中越沖地震で柏崎市や刈羽村は震度6強を記録。中越地震でも震度5-6弱の揺れで、二重被災した住宅は少なくない。

 現地を調査した人と防災未来センター(神戸市)の河田恵昭・センター長の脳裏には、阪神・淡路大震災の被災地とその周辺地域が浮かんだ。

 「十三年前の地震で、震度5程度の揺れが起きた地域の建物は要注意。一部損壊したのに補強していない住宅が、再び地震に遭うともろい」

    ◆

 大震災を経験した兵庫県だが、震度6強で倒壊の恐れがある住宅は推計約四十五万三千戸(二〇〇三年現在)。全体の22%に上る。

 県の調査では、耐震補強工事には平均約二百五十万円かかっている。昨年十月の内閣府の全国世論調査で「なぜ耐震補強をしないのか」との問いに41・9%が「お金がかかるから」と答えた。

 ただ、行政は助成制度の整備を進めてきた。

 県は一九八一年以前の旧耐震基準で建てられた住宅の耐震補強工事に最高六十万円を助成する(マンションは二十万円)。リフォームと併せて施工すれば利子補給もする。上乗せ制度を整えた自治体もあり、神戸市と川西市では、最高三十万円が加わる。

 それでも、県の制度の利用実績は、〇三年九月-〇七年十二月で六百十七戸。倒壊の恐れがある住戸の0・1%にすぎない。

    ◆

 これについて、室崎益輝・神戸大名誉教授(都市防災)は「助成額がまだ十分でなく、とくに低所得者にとって耐震補強は負担が大きい」と分析。「例えば、住民が耐震補強費を出し合う共助の制度を考えてはどうか」と提案する。

 さらに「神戸で大地震はもう無いと思っている人が多い」と住民の危機感の薄さを強調した。

 PRも重要だ。東海地震に備え、県を挙げて耐震補強を進める静岡県。昨年、工事助成制度のテレビCMに中越沖地震の被災者が登場し「大事なものがなくなってからでは遅いんです」と呼び掛けた。これらが奏功し、〇二年五月-〇七年十一月末の制度利用は約七千四百戸を数えた。

 兵庫県によると、県内で大震災に遭い直接死亡した人のうち建物が壊れ圧死・窒息死した人は73%。住宅耐震が進まなければ、同じ惨事が繰り返される。新潟では三年に二度、大地震が起きた。兵庫があす、大地震に見舞われないという保証はない。

2008/1/12
 

天気(9月7日)

  • 33℃
  • ---℃
  • 20%

  • 37℃
  • ---℃
  • 40%

  • 35℃
  • ---℃
  • 20%

  • 35℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ