JR新長田駅北地区の一角で、3体のお地蔵さまを見つけた。赤いよだれかけが愛らしい。
近くでケミカルシューズの関連工場を営む田中幸夫さん(61)が1年前に作った。頭は漁業用の浮き球、体は道路工事の現場で見かけるコーンを使った。
震災後、18地区で行われた行政主導の復興区画整理事業。唯一残る新長田駅北地区も、2010年度で事業が終わる見込みだ。
公園や道路ができ、災害に強い街になったが、その影響で住み慣れた土地を離れた人たちがいる。震災後に記者になった私も、さまざまな場面で被災者の苦悩を知った。
田中さんは言う。「街はきれいになった。あとは、以前のにぎわいが戻ってくれれば」
地域への愛着が伝わるお地蔵さま。「小学生や親子連れが立ち止まっているのを見ると、懐かしい気持ちになる」。田中さんが目を細めた。(斎藤雅志)
2010/1/21