それを見つけたとき、初めは「へぇ~」と思った。「おもしろい光景だ」と。
神戸市長田区長楽町の路地。道の真ん中に電柱が立っている。なんとも不思議だ。
観察していると、電柱の両脇を、自転車の女性や子どもが譲り合いながら通り過ぎていく。「不便では?」。近くの森下貴央さん(44)は「周りの風景になじんで、歩いていても気にならへんよ」と話した。
事情を聞くと、震災が生み出したものと分かり、複雑な気持ちになった。
一帯は約8割の家屋が全半壊した。家を再建するとき、道路を広げ、敷地を後退させた。だが、電柱は道路の端に移せなかった。
被害が小さく、建て替えを免れた家に電線が触れる恐れなどがあったためという。
電柱は震災前と同じ場所で、復興するまちを見下ろし続ける。(峰大二郎)
2010/1/26