兵庫県西宮市神楽町の住宅街の一角に、大きくひび割れた灰色の壁が残る。白ペンキで地震の発生日時が記されている。
親子体操教室「みんなげんきジム」の外壁。正面玄関前の道にも、高さ約15センチの段差が残る。子どもたちの元気な笑い声が、中から聞こえる。
夙川と国道2号が交わる一帯では、地震で多くの人が生き埋めになった。約50人の被災者らが身を寄せた教室の建物は避難所になり、遺体安置所にもなった。
運営する米田和正さん(61)は、教え子たちの死にも直面した。「自分は生かされている。毎日をしっかり生きたい。それを忘れないように傷痕を残したんです」と振り返る。近くには震災後、JRさくら夙川駅が完成。街並みが変わる中で、ここだけ時が止まったかのように当時の記憶を伝えている。
2000/12/26