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(4)コミュニティー 地域再生へ 寄り添い支援
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仮設住宅でのお茶会。「初めまして」「久しぶり」。言葉が飛び交う=宮城県石巻市門脇
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仮設住宅でのお茶会。「初めまして」「久しぶり」。言葉が飛び交う=宮城県石巻市門脇

仮設住宅でのお茶会。「初めまして」「久しぶり」。言葉が飛び交う=宮城県石巻市門脇

仮設住宅でのお茶会。「初めまして」「久しぶり」。言葉が飛び交う=宮城県石巻市門脇

 住み慣れた町を離れ、仮住まいをする人。何とか残った自宅に踏みとどまる人-。コミュニティー再生へ、模索が続く。

 宮城県石巻市の「青葉西仮設住宅」(14戸)の集会所で2月19日、入居者たちの「お茶会」があった。周辺の仮設住宅にも声をかけ、午前と午後、約10人ずつが集まった。

 「皆で話してっと、嫌なことも忘れっぺ」「こんな会でもないと、お互い顔も合わせねえし」。にぎやかな輪の中に、津波で妻を失った男性(71)がいた。入居間もなく、サンマをくれた人がいた。お返しに育てたトマトをあげた。今は誘い合って顔を出す。顔なじみが増えたことを喜ぶ。

 お茶会を企画したのは、神戸市東灘区のNPO法人「よろず相談室」。阪神・淡路大震災の仮設住宅や復興住宅で見守りの訪問ボランティアを続けてきた。

 スタッフ梶田洋美さん(53)の心配は、訪ねてもあまり顔を出さないお年寄り。地元の社会福祉協議会が仮設住宅約140戸でアンケートをすると、訪問希望者は約2割にとどまった。「そこが悩みどころ。でも、嫌がられるからといって、放っておいたら本当に孤立してしまう」。梶田さんらは、お茶会の翌日もお年寄り宅を回った。

 石巻市北部の雄勝(おがつ)地区。神戸市出身の医師小倉健一郎さんは昨年10月、同地区の仮設診療所を仕事場に選んだ。津波の被害で住民は散り散りとなったが、約4500人のうち、約1300人が残った自宅などで暮らす。

 海沿いに点々とある集落に残されたのは高齢者。小倉さんは地元の福祉関係者とともに、孤立世帯の支援に知恵を絞る。

 仮設診療所の待合室には、地元の方言で「お茶っこのみ すっぺし」と書いた紙を張った。診察を終えたお年寄りはここでお茶を飲み、しばし語らう。「絆をどう守るか。長い目で寄り添いたい」と思う。

    ◆

 岩手県大槌町。ぎりぎりで浸水を免れた住宅街の空き地に「かけはし」と看板を掲げたコンテナハウスがあった。震災直後、男性ばかりが集まり、津波から逃げてきた人たちを支援しようと立ち上げたボランティアの活動拠点だ。

 直後は、避難所での炊き出しや物資の手配に奔走した。被災者が仮設住宅に移り、役割は終えたかと思ったが、違った。「仮設で酒飲んでねえかって気になる人がいるから電話してみたり、訪ねてみたり。すっかりやめられなくなった」。地元の元消防職員越田勝さん(64)は、兄2人が津波にさらわれた悲しみを抱え、1年を走り抜けた。

 ハウスには入れ代わり立ち代わり住民が顔を出す。全国から駆け付けてくれたボランティアは次第に減ってきた。「震災で絆は強まった。あと半年は頑張ってみっか」と越田さんは言った。(岸本達也)

コミュニティー再生へ 被災者の見守り課題 仮設分散、高い高齢化率

 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島県の仮設住宅に暮らす被災者は約4万8千世帯で、阪神・淡路大震災のピーク時の約4万7千世帯とほぼ同じだ。だが、東日本の被災地は南北300キロ以上に分散し、建設箇所数も阪神・淡路の1・4倍。さらに、仮設住宅とは別に、民間賃貸住宅を県が借り上げて家賃を補助する「みなし仮設」も3県で約5万3千戸ある。高齢化率の高い東北地方で、被災者の孤立をどう防ぐかが課題となっている。

 東日本大震災の仮設住宅は5万2620戸。うち東北3県は5万2305戸で、現在4万8360世帯が入居している。阪神・淡路大震災の場合、入居戸数のピークは震災から約10カ月後の4万6617戸。解消するまでに丸5年かかった。

 阪神・淡路で問題となったのは、入居者が誰にもみとられずに亡くなる「独居死」。5年間で233人に上り、60歳以上が約6割を占めた。最も多かったのは震災の翌年だった。

 東日本の仮設住宅では現在、入居者同士の交流会や安否確認などが展開されている。兵庫県も17年前の経験を生かし、コミュニティーづくりに取り組む団体に助成金を出すなどの支援を行っている。

 阪神・淡路の仮設住宅での「独居死」のうち、約7割が男性。東日本でも男性をいかにコミュニティーの輪に引き込むか、に腐心している。岩手県大槌町では、集会所を使った「男の料理教室」が1月から始まった。

 同町での取り組みを支援している神戸市東灘区のNPO法人「コミュニティ・サポートセンター神戸」の中村順子理事長は「阪神・淡路で被災者が元気になったのは、人とつながり、自分の役割を見つけたときだった。被災者を一方的にケアするのでなく、『何かできることはありませんか』と声をかけ、可能性を引き出すことも大切」と話す。

 一方、見守り活動を行うスタッフからは「自分が関わった入居者に事故があったら、精神的に耐えられるだろうか」などと不安の声も上がっており、支援する側へのケアも求められている。(岸本達也)

住宅被害と仮設住宅の状況
 兵庫県
(阪神・淡路大震災)
東北3県
(東日本大震災)
全半壊数24万956棟33万1076棟
仮設住宅数4万8300戸5万2305戸
仮設住宅の建設箇所数
(1カ所あたりの戸数)
634カ所
(76戸)
05カ所
(58戸)
入居戸数4万6617戸(ピーク時)4万8360戸
震災前年の高齢化率(全県)12.9%24.1%
※東北3県では仮設住宅のほかに民間借り上げ住宅への入居(みなし仮設)が約5万3000戸

2012/3/8
 

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