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(5)雇用確保 震災前と同じ仕事したい
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生きるために。仕事を求めて相談に訪れた失業者。希望の職に就く道のりは険しい=岩手県釜石市新町、ハローワーク釜石
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生きるために。仕事を求めて相談に訪れた失業者。希望の職に就く道のりは険しい=岩手県釜石市新町、ハローワーク釜石

  • 生きるために。仕事を求めて相談に訪れた失業者。希望の職に就く道のりは険しい=岩手県釜石市新町、ハローワーク釜石

生きるために。仕事を求めて相談に訪れた失業者。希望の職に就く道のりは険しい=岩手県釜石市新町、ハローワーク釜石

生きるために。仕事を求めて相談に訪れた失業者。希望の職に就く道のりは険しい=岩手県釜石市新町、ハローワーク釜石

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 「悩んで、悩んで決めた。悔しいけれど」。岩手県釜石市の岡田学さん(42)は唇をかんだ。津波に襲われたあの日から1年が過ぎる3月16日、住み慣れた町を離れる。

 新日本製鉄(新日鉄)釜石製鉄所と関連企業が集まる企業城下町。岡田さんも新日鉄の子会社に勤めてきたが、会社は津波で流され、昨年末、解雇された。

 「会社、どうなるんだべね」。同僚らと心配しながら会社からの連絡を待った。津波から2カ月後、「全員7月半ばまで休業」と告げられ、給与の8割が休業手当として支給されることになった。

 その後、東京への出向を提案されたが、小学生と中学生の娘たちは友人と一緒にいることで不安に耐えている。それを思うと、決心がつかない。岡田さんら釜石に残った約3割の従業員は、職を失った。

 1月から失業給付を受け、ハローワークに通う。工業高校出身で、ものづくりの仕事を希望するが、福祉や事務系など経験がない職種ばかり。がれき撤去や警備業務も短期雇用しかない。震災の1年半前に建てた自宅は壊れ、1千万円以上のローンが残る。

 「娘2人に進路の選択肢を広げてあげたいが、釜石では無理かもしれない」。実家がある青森県八戸市に移ることを決めた。

 雇用のミスマッチは、17年前の阪神・淡路大震災でも同じだった。ハローワーク釜石管理課長の小野寺豊さん(46)は「雇用と、雇用を生む事業所支援を合わせて考えないと、解決は難しい」と話す。

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 「無我夢中で走ってきたけど、そろそろ先を考えないと」。宮城県気仙沼市の就労支援団体「気仙沼復興協会」事務局長の千葉貴弘さん(37)は、厳しい表情で言った。

 市の人口約7万人のうち、失業者はピーク時で1万人を超えたともされる。市の機能がまひしたため、失業者らでつくる同協会が国の緊急雇用創出事業の受け皿となった。登録する約110人が清掃などで収入を得る。

 千葉さんも失業者。17年勤めたホテルが津波で被災した。昨年3月下旬に解雇され、知人の紹介で同協会に入った。

 登録しているのはそば屋の店主、板前、漁師、農家、美容師…。今は経験が問われない側溝や家屋の清掃、ごみ拾い、害虫の駆除、草刈りに従事する。

 「みんな、震災前と同じ仕事をしたい、との思いは同じ。でも、食べていくために必死なんです」と千葉さんは代弁する。その働き口さえ、復旧作業が一段落すれば減ってしまう。

 緊急雇用創出事業は2012年度までの可能性が高い。被災企業の再開が見えない中、「あと1年で、みんなが自力で生活の糧を築ける道を探らなければ」と焦る。

 「仕事をする、ということは自らの尊厳を守ること」。思いは切実だ。(宮本万里子)

被災3県の離職者23万人 求職と雇用のズレ深刻

 東日本大震災の被災地で、雇用のミスマッチが生じている。阪神・淡路大震災でも、復興事業の本格化に伴って建設業を中心に求人が増えたが、失業者の希望と職種が一致せず、人手が足りない事業者も少なくなかった。国は緊急雇用創出事業による支援を展開するが、被災地からは「求人増は一時的で、安定的な雇用確保につながらない」と切実な声が上がる。

 東日本大震災では、阪神・淡路大震災と同様、多くの企業が被災したのに加え、漁師や農家、自営業などの個人事業者が大きな打撃を受けた。厚生労働省によると、岩手、宮城、福島の3県で、震災後から今年2月19日までに、勤務先を辞めたり、解雇されたりして離職票を交付された人は約23万人に上る。

 これまでに、岩手、宮城、福島県のハローワークに職を求めて訪れた人は約40万人。阪神・淡路大震災では、発生から2年間に寄せられた相談は約6万件だった。

 国は特例措置として、失業給付の受給期間を震災から最長17カ月に延長。失業者や事業者からの特別相談窓口を設けたほか、市町村などに人件費を補助する緊急雇用創出事業を2012年度末まで実施する。

 被災3県の有効求人倍率は、震災直後の2011年4月は、岩手県0・42倍▽宮城県0・46倍▽福島県0・5倍で、福島を除いて前月より下がったが、復旧関連の需要増により、12年1月は、岩手県0・75倍▽宮城県0・82倍▽福島県0・74倍といずれも上昇した。

 だが、岩手県釜石市と大槌町を管轄するハローワーク釜石によると「求職者のほとんどが正社員での長期雇用を求めるが、求人全体の6~7割が6カ月前後の短期雇用。職種も復旧・復興に伴う建設関係の仕事や警備業務が多く、特に女性の就職難は深刻だ」という。

 東北で失業者らの支援に取り組む労働組合「神戸ワーカーズ・ユニオン」の黒崎隆雄さん(59)は「阪神・淡路の被災地で実践したように、仮設住宅を回って被災者の要望をていねいに調査するなどした上で、的確な支援策を打ち出すことが大切だ」と話す。(宮本万里子)

2012/3/9
 

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